2009年3月に卒業した薬学生の進路は薬局が32・7%と最も多く、過去最高となった。一方、「進学」は25・0%で、前年に続き30%台を割り込んだ。中でも、進学率が高かった男子が前年に続き40%台を割り込み35・3%と、00年当時の水準となった。全卒業生は1万0693人で、過去最多を更新した。薬学教育協議会(望月正隆代表理事・東京理科大教授)がまとめた、09年「薬科大学卒業生・大学院修了者就職動向調査」で明らかになった。
薬学教育協議会は毎年、全国の薬科大学・薬学部に依頼し、学部卒業生および修士・博士課程修了者の進路動向と初任給の調査を行っている。
今回、調査対象とされたのは62校(国立14校、公立3校、私立45校)で、前年より私立が6校増えた。それによると、全卒業生は1万0693人(男4598人、女6095人)で、前年に比べ584人増加した。全卒業生のうち、就職したのは7282人(68・1%)で、前年より4ポイントほど伸びた。このうち給与が判明したのは45・3%だった。
主な進路は、[1]薬局(勤務・開設等)32・7%(前年30・7%)[2]進学25・0%(28・9%)[3]病院診療所勤務(薬局)16・9%(15・0%)[4]企業8・2%(8・6%)[5]一般販売業4・0%(4・7%)[6]病院診療所研究生1・7%(1・8%)[7]衛生行政1・6%(1・5%)[8]卸売販売業1・3%(0・9%)-- で、この数年、薬局への就職割合が増加を続けている。また、「就職せず」「未定」は合わせて5・1%だった。
男女別では、男子は例年通り進学が最も多く35・3%、次いで薬局26・8%、病院診療所勤務(薬局)11・3%、企業9・4%の順。女子では薬局が37・0%と最も多く、次いで病院診療所勤務(薬局)21・3%、進学17・3%、企業7・3%の順で、男女とも、前年より進学が減少し、就職が増加した。
設置母体別にみると、国公立大学は例年と変わらず男女共に「進学」がトップ。ただ今回、男子は公立が78・9%で、国立の75・8%を上回った。また女子では、国立55・8%、公立52・3%と、「進学」が過半数を超えていた。
一方、私立では、男女とも薬局がトップで、男子は31・1%、女子39・8%だった。次いで、男子は進学27・0%、病院診療所勤務(薬局)12・6%、企業11・0%の順となっている。同様に女子は、病院診療所勤務(薬局)21・9%、進学13・0%の順で、男女ともに進学が減少した。
初任給は前年並みの23.6万円
初任給は、平均23・6万円で、前年の23・9万円より3000円少なかった。就職先別に前年と比較すると、薬局(勤務)は24・8万円で前年の25・1万円とほぼ同額。病院薬剤部は21・2万円、一般販売業は27・6万円で前年とほぼ同額だった。
初任給が30万円を超える例は、96~98年が0・4%程度だったものの、年々増加して05年は9・8%に達していた。しかし、その後は漸減し、今年は4849人中323人の6・6%。うち、薬局が188人で過半数を占め、一般販売業が106人となっている。なお、一般販売業で給与が判明しているのは333人で、3割が30万円以上の初任給を得ている。
協議会では調査をまとめ、「大部分の私立大は6年制の薬剤師教育体制となり、国公立大も4年制の定員を減らしている。来年度からの大学院への進学者は減少する」との見方を示している。
今後の就職動向については、「卒業生が前年度1万0109人、今年度は1万0693人と1万人台になったが、今年度は薬局(勤務)に3473人、病院薬剤部に1812人、製薬企業関係に886人が就職し、大学院には2678人、未就職および未定は551人(5・1%)に過ぎなかった。求人が就職希望者数を上回っていたと思われる。11年3月に6年制の第1期生が卒業するまでの2年間は、薬剤師受験資格のある卒業生がいないため、著しい薬剤師不足が生じるもの予想される」と見通している。