財務省と厚生労働省が相次ぎ、2010年度予算編成での医療費の取り扱いについて見解を発表した。全体プラス改定を阻止したい財務省と、配分の見直しだけでは医療再生が難しいとする厚労省が、次期診療報酬改定の方向性を牽制し合った格好だ。
財務省は11月19日、野田佳彦副大臣が会見で、予算編成上の主な個別論点の第1弾として、医療を取り上げ、診療報酬本体について「底上げではなくて、大胆な配分の見直しを行う、という姿勢で査定をしていきたい」と発言。
薬価をめぐっては、実勢価に基づく通常改定に加え、長期収載品薬価を後発品並に引き下げる必要性を指摘し、「平年並みの1・2%(医療費ベース)とか、ああいうレベルでないことは間違いない」と述べ、前回改定を上回る薬価引下げを行いたい考えを示した。
さらに、ホームページに関連資料を掲載し、本体の配分見直しの視点として、[1]官民の人件費カットやデフレ傾向の反映[2]収入の高い診療科の報酬見直し[3]開業医の報酬を勤務医と公平にする--の三つの切り口を提示すると共に、診療報酬以外の制度的対応を総動員すべきと主張した。薬価については、長期収載品の薬価引下げにより、「医療費を0・8兆円以上節約でき、その分、国民負担の軽減になる」との考え方を示した。
これに対し厚生労働省は、11月27日付で見解を発表した。医療費の対GDP比が、OECD加盟30カ国中21位と国際的に低水準であることを主張し、「効率的かつ質の高い医療を提供してきたが、高齢化の進展等による患者増などで、医療現場は疲弊している」と説明した。また、三党連立政権合意で、先進国並の医療費を確保する方針を確認し、民主党の公約でも、入院診療報酬の増額が掲げられていると指摘した。
さらに、開業医と勤務医の給与格差を前面に押し出した論調に対し、「診療報酬=医師の報酬ではない」として、異議を唱えた。
その上で、総額34兆円、医科だけでも26兆円に及ぶ医療費の規模を踏まえると、診療科間の格差是正、病診間のバランスへの配慮に取り組んだとしても、「医療再生のためには、もう一段の検討や努力が必要」と強調した。