今年夏から始まった厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」は、11月末に第6回会合を開き、薬剤師の在宅医療チームにおける主な役割を議論した。当然の業務ばかり並んだ中に、処方設計支援、職種間の情報共有・連携などが挙げられた。解釈によっては、一歩踏み込んだ業務ともいえる。
同検討会は「規制改革推進のための3カ年計画(再改定)」(2009年3月31日閣議決定)で、処置・処方・投薬ができる「ナースプラクティショナー」などの導入について検討が求められ、6月に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2009」で、専門看護師の業務拡大等について、専門家会議で検討し、年度内に具体策をまとめるよう求められたことに対応したもの。
当初、医師と看護師との役割分担と連携の検討から入ったものの、看護師以外のコメディカルを含めたチーム医療について、包括的に議論すべきとの方向性が示されたことで、病院薬剤師のヒアリング、さらに開局薬剤師の役割に関しても、唯一の薬剤師委員の山本信夫日本薬剤師会副会長による意見陳述にたどり着いた形だ。
山本氏は、在宅患者訪問薬剤管理指導業務の認知が低いこと、医療機関や患者が薬局に関する情報が少なく、在宅医療への参加プロセスが不明確などの課題を挙げ、地域連携クリティカルパスにおける薬局・薬剤師の役割の明確化を求めた。
確かに、薬局・薬剤師が在宅患者の訪問管理指導を実施していることへの、社会的な認知度は低いように思う。往診に積極的で薬剤師に理解のある医師がいる地域で、対応する一部薬局が“専門的”に取り組んでいるのが現状。
OTC薬への取り組み同様、組織としての盛り上がりに欠けている印象も受ける。医師会、看護協会はもとより患者へのアピール度も低いのも現状であろう。知られていないのは,当然といえば当然のこと。
一方、現場で訪問指導に積極的に取り組む薬剤師たちの情熱は熱い。チェーン店が中心になりがちだが、訪問指導の実績は、若い薬剤師には“求人”のインセンティブ、“定着率”の支えにさえなっていると聞く。“在宅医療”も薬局・薬剤師の業務の一環との認識した上で、高齢化社会という現実に根ざした将来ビジョンに基づいた企業展開でもあろう。
当初、日薬による「薬剤師の将来ビジョン」中間報告は、今秋にはまとめる予定だったが、児玉孝会長からは、早々に年末になるとの見解が示されている。最終報告でどこまで具体的に示すかは、相当な議論が必要との見方もあり、いつ将来ビジョンが示されるのか皆目、見当が尽きかねる。
一方の日本病院薬剤師会では昨年末に、「新しい業務展開に向けた特別委員会」を設置。新しい職能・役割をアピールしつつある。
また、賛否はあるが癌専門薬剤師制度も「広告可能な専門資格」に向け、日本医療薬学会認定へ移行した。「実」を目指し一歩前進だ。
十分に検討することは大事なことで、真打ち登場も華々しくよいが、周りの動きは素早い。政権交代下であればこそ、一歩も二歩も踏み込める可能性もあろう。次代を担う6年制薬剤師が広く活躍できるよう、強かなビジョンが早々に望まれる。