先月、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が発表した2009年度日本のドラッグストア実態調査結果によると、09年度のドラッグストア総店舗数は1万5971店舗で、前年度に比べ346店舗増加。総売上高も4%増の5兆4430億円と、プラス成長を続けている実態が明らかになった。00年度の調査開始以来、10年間、増加を続けていることになる。
拡大成長路線にあったドラッグストア(Dgs)業態を取り巻く環境も大きな変革期を迎えている。昨年6月の改正薬事法施行以降、医薬品販売制度が大きく変化したことに加え、一昨年のリーマン・ショックによる世界的な景気後退により、国内でも消費不況から抜け出せていない。
これまでDgsは、OTC薬を中心とするヘルス&ビューティー関連製品の豊富な品揃えと、低価格販売路線により成長してきた。しかし、消費不況や、少子高齢社会の急速な進行、人口減などの問題も踏まえると、今後、業態として大きな岐路に立たされている感は否めない。
JACDSが目標と掲げる15年の10兆円産業は、現在の約2倍のボリュームでもあり、業態変革なくしては難しいのではないだろうか。
改正薬事法施行から間もなく1年間を迎えようとしているが、これまで延べ約8万人の登録販売者が誕生した。登録販売者総数の増加と共に、異業種の医薬品販売事業への本格参入が一層進むものと見られる。既に大手Dgs企業を中心に、コンビニや調剤薬局などとの異業態提携による新業態店の開発が進行中である。
そうした中、あるDgs経営者は、「Dgs企業は12年4月までをどう過ごすかが大きなテーマになる。12年は、診療報酬と介護報酬の同時改定、6年制薬剤師の登場、改正薬事法の見直しの時期にも当たる。そこまでがDgs業界に与えられた最後のモラトリアム。今の状況変化に汲々としているようでは、とても生き残れない」と言い切る。
今後、異業種、同業間を問わず競争が激化するのは確実で、有力Dgs企業の新たな市場創出を目指した動きも活発化することも予想できる。 Dgsの方向性に関しては、「国民の健康や医療・介護に寄与する、新しい社会的役割や機能を有する業態に進化できるか否かが問われている」(JACDS)という。日本のマーケットの構造的変化に対して、従来の事業規模や仕入れ力、資本力の大きさによるバイイングパワーを顕示するだけの対応では、生き残るのは難しいということだろう。
やはり、Dgsの機能としては、疾病が重症化しないよう早期発見するための役割を、薬剤師等が中心となって担っていくことがポイントになる。今後は、医療提供施設である薬局機能を備えることにより、地域医療へ貢献していくことがDgs企業としての存続、発展にも大きく関わってくるのではないか。
2年後に輩出される6年制薬剤師が活躍できる現場の整備こそが、Dgs業界の発展の鍵になると思う。