政府が18日に決定した新成長戦略では、21の国家プロジェクトの一つに、「医療の実用化促進のための医療機関の選定制度等」を掲げた。臨床研究コンソーシアム構想と、特定医療機関での先進医療の評価・確認手順を簡素化することが柱となっている。世界標準でありながら、国内未承認・適応外となっている医薬品・医療機器を、保険外併用療法として提供することで、難治疾患治療の選択肢を広げ、ドラッグラグ、デバイスラグを解消するのが狙い。
21の国家プロジェクトは、環境、健康、科学・技術など七つの戦略分野で、特に、経済成長への貢献度が高いと考えられる施策として選ばれた。このうち、健康分野では、医療機関の選定制度等によって、これから飛躍的な成長が望まれる、医薬品・医療機器・再生医療などのライフサイエンス分野で、技術力・創造力の発揮を促す。新たな医薬品・医療機器の創出や再生医療市場を顕在化することで、2020年までに年間約7000億円の経済効果を目指す。
コンソーシアムは、癌や認知症などの重点疾患ごとに、専門的医療機関を中心に形成する計画。研究支援人材の配置や、研究費の重点配分のほか、先進医療に対する規制を緩和する。成長戦略実行計画(工程表)によると、10年度は重点研究テーマを設定し、11年度からコンソーシアムを創設する運び。
先進医療の評価・確認手順の簡素化は、患者保護や最新医療の知見保持の観点から選定された医療機関を対象に実施する構想。今年度は未承認薬などを提供する医療機関の選定とネットワーク化を実施し、来年度から運用を開始する計画だ。
工程表では、「健康大国戦略」の具体的メニューとして、早期臨床試験の強化やグローバル臨床研究拠点の整備を含む「ポスト治験活性化5カ年計画」を、11年度に策定することも明記。「日本発シーズの実用化に向けた薬事戦略相談(仮称)」も11年度に創設し、さらに、医薬品医療機器総合機構の人員増強やアカデミア・企業等との人材交流、臨床評価ガイドラインの策定などにも取り組んでドラッグラグを解消する。
また、レセプトデータ等の利活用に関するルールを整備して、11年度早期に研究者・民間事業者等から利用申請を受け付けることや、個人情報保護に関する指針を整備して、医療データを11年度から医薬品等安全対策へ活用する方針も示している。
このほか、医療提供体制に関する今後の需要予測を踏まえたグランドデザインの策定、看護師・薬剤師・看護職員等の既存職種の活用促進・役割拡大なども盛り込まれている。