総務省は6日、2010年版情報通信白書を公表した。テーマに「ICTの利活用による持続的な成長の実現」を掲げ、ICT(情報通信技術)の利活用によって向上する便益を検証し、国民本位のICT利活用社会の方向性や、競争力強化の道筋を探っている。医療・健康分野の公的ICTサービスも分析対象として取り上げ、国民の6割以上が利用に前向きなことや、利活用の徹底によって、年間に約1・5兆円の利用者便益と、約1・9兆円のコスト削減が見込まれることを示している。
白書はまず、ICTの現状として、ブロードバンド基盤は整備されたものの、諸外国と比べてサービスの充実や利用が進まず、特に電子行政の取り組みの遅れが目立つことを指摘。自治体の先進的ICT利活用事業の実施率では、医療・介護分野は5・5%にとどまることを紹介している。
その上で、ウェブアンケートで公的ICTサービスの利用意向をインターネット利用者に尋ねた結果を解説。医療・健康分野については、[1]健康状態に合わせた最適健康管理サービスで69・9%[2]病状に合わせた最適医療サービスで75・8%[3]診療の事前予約サービスで81・9%――が、利用に前向きな意向を示したという。
ただ、消極的な回答もあるため、「全ての国民にとって価値あるICTサービスとするには、まだ課題が残されている」とも指摘。情報の取り扱いに関するガイドラインの策定、セキュリティ担保のためのシステム構築によって、個人情報管理に対する不安を解消すると共に、サービスの位置づけや、既存サービスとの使い分けについて、検討を深める必要があるとの考えを示している。
さらに白書は、機会費用の削減など、GDPに含まれない効果を含めた、公的ICTサービスの経済価値を推計した結果を紹介している。
医療・健康分野では、生活習慣病予防による医療費削減、重複受診に伴う無駄解消、受診の際の待合時間の削減などを利用者の便益と想定。時間や費用を、現状から25%引き下げると仮定した「中位推計」で、利用者が享受する経済価値として、[1]健康管理サービスで5777億円[2]医療サービスで2443億円[3]事前予約サービスで6682億円――の合計1兆4902億円を創出するとした。
サービス提供側の経済効果については、医療費の行政負担削減分を積み上げ、中位推計の場合、健康管理サービスにより1兆3479億円、医療サービスにより5360億円の合計1兆8839億円のコストを圧縮できるとの見込みを示している。