協和発酵キリンは7月28日、2012年に発売を予定している抗CCR4抗体「KW‐0761」について、米アムジェンから癌領域に関する開発・商業化権を2000万ドル(約18億円)で買い戻したことを明らかにした。国内第I相試験で高い有効性が得られ、血液癌を対象とする抗CCR4抗体に競合品もないことから、圧倒的優位に事業展開できると判断。アムジェンが留保していた癌領域のオプション権を全て買い戻すことで、自社第一号のポテリジェント抗体となる「KW‐0761」を、グローバル戦略製品として育成する方針にシフトした格好だ。
「KW‐0761」は、旧協和発酵が開発した抗CCR4ヒト化モノクローナル抗体。急性T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)の、90%に高発現するケモカイン受容体CCR4のヒト化抗体として、強い作用を発揮する。独自開発した高活性抗体技術のポテリジェントを活用したもので、現在、成人T細胞白血病(ATL)患者を対象に、国内第II相試験を実施中。11年に承認申請、12年に発売予定としている。「KW‐0761」が上市されると、協和発酵キリンが自社開発したポテリジェント抗体の第1号となる。また米国においても、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、皮膚T細胞リンパ腫を対象に、第I/IIa試験を実施中。
既に国内で実施された「KW‐0761」の第I相試験では、0・1mg/kgのごく低用量で完全寛解(CR)が得られ、再燃・再発例に対する単剤の奏効率も31%に上るなど、確かな有効性を裏付ける成績が得られている。
こうした状況を受け、協和発酵キリンは「KW‐0761」の導出先のアムジェンが留保していた、癌領域に関するオプション権を買い戻す方針を決定。交渉を進めた結果、最終的に2000万ドルで買い戻しに成功し、「KW‐0761」の全世界における癌領域の権利を保有することになった。
都内で開いた中間決算説明会で、松田讓社長は「何としても、グローバルに展開できる戦略的製品として手がけたい」と強調。「抗CCR4抗体は、現在のところ競合もないため、圧倒的優位に事業を展開できる」と自信を示した。今後、協和発酵キリンは、グローバル戦略製品化にシフトした「KW‐0761」の海外展開に向け、最大市場の米国における販売戦略を本格化させることになるが、松田氏は「買収も大きな選択肢の一つ」との考えを示した。