米イーライリリーは、グローバルで第III相試験段階にあるアルツハイマー型認知症治療薬「セマガセスタット」について、全世界での開発を中止したと発表した。2本の長期第III相試験の中間解析を行ったところ、疾患の進行抑制が見られず、主要評価項目でプラセボ群を下回る結果が示されたためとしている。
セマガセスタットの第III相試験は、2008年3月から軽度・中等度のアルツハイマー型認知症患者2600人を対象に、日本を含めた世界31カ国で実施された。中間解析結果では、セマガセスタット群は、疾患の進行抑制が見られず、主要評価項目の「認知機能」「日常生活能力」でプラセボ群を下回ったほか、皮膚癌の発症リスクも有意に高まることが分かった。
この結果を受け、同社はセマガセスタットの開発中止を判断。セマガセスタットの臨床試験に関わる全ての医師に対し、被験者の治験薬服用を直ちに中止するよう勧告した。ただ、セマガセスタットの投与は中止するものの、認知機能スコアを含む安全性データの収集については、少なくとも6カ月間は継続する予定。
セマガセスタットは、アミロイドβ蛋白をターゲットとしたγセクレターゼ阻害剤。同社が開発を進めるアルツハイマー病治療薬では、抗アミロイドβ抗体「ソラネズマブ」が第III相試験段階、そのほか2種類の化合物が早期開発段階にあるが、いずれもセマガセスタットと作用機序が異なるため、今回の発表が開発に影響することはないとしている。