国内大手製薬企業4社の2011年3月期中間決算(連結)が出揃った。武田薬品とアステラス製薬は、米国で特許切れした主力品の売上が約半減と苦戦するなど、「2010年問題」が直撃。円高のマイナス影響も大きく、両社とも減収減益に落ち込んだ。一方、特許切れの影響が少ない第一三共は、インド子会社ランバクシーの大幅な売上増が貢献し、増収増益。エーザイも、目前に主力品の特許切れが迫る中、過去最高の増収増益を達成した。大手各社とも、これまで業績を牽引してきた海外売上高の伸びが失速しつつあり、2010年問題の本格化を反映する中間決算となった。
売上高を見ると、国内トップの武田は、主力の2型糖尿病治療剤「ピオグリタゾン」が国内の価格見直しなどにより、0・8%増と盛り返したが、米国で特許切れした消化性潰瘍治療剤「ランソプラゾール」は、後発品の浸透を受け42・5%減の752億円と大きく売上を減らした。ミレニアム製品の多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」、国内の新製品が伸長したが、557億円の売上減となったランソプラゾールの落ち込みをカバーできず、全体で5・5%の減収となった。
同様にアステラスは、グローバル製品の過活動膀胱治療剤「ベシケア」が4・0%増、抗真菌剤「ファンガード/マイカミン」が18・2%増と伸長したが、米国で特許切れした主力の免疫抑制剤「プログラフ」が後発品の影響を受け、20・8%減となり、6・7%の減収となった。
これに対し、主力品で特許切れの影響が少なかった第一三共は、グローバル製品の高血圧治療剤「オルメサルタン」が5・4%増と伸長。特にランバクシーが49・0%増の985億円と大きく貢献し、6・0%の増収を確保した。
エーザイも、抗潰瘍剤「パリエット/アシフェックス」が、米国で競合ブランド品の後発品が影響し、4・1%減となったが、今月に米国特許切れを迎える主力のアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」は、日本と米国で大きく伸長し10・3%増の二桁成長を達成。4・4%の増収。
武田とアステラスは、主力品の特許切れの影響が大幅な売上減として直撃し、2010年問題の深刻さが浮き彫りになったのに対して、ランバクシー買収で新興国市場と後発品を手中に収めた第一三共は、その恩恵を十分に受けた格好となった。ただ、エーザイは、過去最高の増収を計上したとはいえ、これから米国特許切れの影響が表面化してくるだけに、予断を許さない状況にある。
一方、利益面は、武田とアステラスが主力品の大幅な減収が響き、減益に落ち込んだが、第一三共とエーザイは増収効果で大幅な増益を達成。特にエーザイは過去最高益となった。
営業利益を見ると、武田は減収が利益率を押し下げ、8・6%減。アステラスも減収の影響で原価率が悪化したことに加え、導入費用など研究開発費が大きく膨らみ、47・5%減と二桁減益となった。これに対し、第一三共はランバクシーの増収により、77・2%増。エーザイも自社販売体制の強化などが寄与し、36・8%増と大幅な増益を確保した。
通期は、ランバクシーが好調な第一三共が増収予想としているが、武田、アステラス、エーザイの3社は円高と特許切れの影響で減収予想。また営業利益は、武田とアステラスが二桁減益となる一方、第一三共は経費の圧縮で増益を確保。減収予想のエーザイも、収益性の向上で過去最高益となる見通しだが、大手3社が2010年問題の逆風に直面することになる。