独メルクは、米ミリポアのライフサイエンス事業を統合し、新たに日本国内で「メルクミリポア事業本部」を発足させた。主力事業は、ライフサイエンス研究用機器・試薬等のバイオサイエンス部門、バイオ医薬品の製造プロセス向け製品等のプロセスソリューションズ部門と位置づける。特に4割を占める製薬向けサービスは、抗体医薬、ワクチン等の開発が増加していることを受け、バイオ医薬品の研究から製造プロセスまで、トータルで製品群を提供できる強みを生かしたい考えだ。
メルクは、旧ミリポアの製品群と販路を確保し、ライフサイエンス市場に本格参入を目指している。日本国内でも、メルクの一事業部として「メルクミリポア事業本部」が発足し、統合作業が急ピッチで進められている。
メルクミリポアの主力事業は、研究用と製造プロセス用の製品群となる。ライフサイエンス研究向けは、細胞培養培地・試薬やセルベースアッセイ、研究用各種抗体等を販売。創薬研究に関しても、スクリーニングキット、アッセイからキナーゼ、Gタンパク質共役型受容体など、幅広い製品群を提供する。また、バイオ医薬品の製造プロセス向けは、ろ過用フィルター、濃縮装置、微生物検出システムなど、全プロセス工程で用いられる製品群ラインナップが特徴だ。
メルクミリポア事業本部長の細田裕之氏は、「合併により、製品ポートフォリオが充実してきており、非常に良いシナジー効果が得られるのではないか」と期待をかける。旧ミリポアの強みである広範な販売網に、メルクの製品開発力を融合させることで、ライフサイエンス、バイオ医薬品の研究開発から製造プロセスまでをカバーするトータルソリューションプロバイダーを目指していく。
メルクミリポアの提供する製品群、サービスは製薬向けが4割を占める。細田氏は「創薬ターゲットが決定し、プロセス製造段階に入ると、われわれの強みが発揮できる」と強調する。特に最近増加している抗体医薬、生物製剤、ワクチン等、バイオ医薬品の製造プロセス向け製品群を、成長ドライバーと位置づける。
バイオ医薬品に関しては、研究開発から製造プロセスに至る全工程をサポートできる製品群が揃っている。細田氏は、「抗体医薬の開発プロセス全般にわたって製品群を提供できるのは、世界でわれわれしかないと思う。今後はバイオ医薬品が成長の大きな要因になってくるだろう」と見通しを語る。
国内でメルクミリポア事業本部が発足し、約半年が経過したが、年内にはオフィスを統合し、合併を完了させる予定。メルク化学品事業の一事業部として、本格的なシナジー効果を生み出す段階に入った。
その一つが、メルクの医薬品事業を手がけるメルクセローノとのシナジーだ。現在、メルクセローノの主力製品は、抗癌剤「アービタックス」等のバイオ医薬品が中心であり、細田氏は「バイオ医薬品の製造技術が進化していることを考えると、われわれが開発した製品群を、メルクセローノはいち早く試すことができる。研究段階からお互いの開発スピードが加速することが最大のシナジー」と見ている。
今後、メルクと旧ミリポアで重複している販売網を見直し、年内にはメルクミリポアの販売網を構築したい考え。細田氏は「われわれの新事業戦略、製品群を理解してもらうことが重要。まだ知られていない旧メルクの優れた製品群を掘り起こし、ミリポアの販売網によって広げていけるかが当面の課題」と前を見据える。