厚生労働省は24日、2型糖尿病治療薬「塩酸ピオグリタゾン」について、膀胱癌治療中の患者への投与を控えるよう、添付文書の改訂をメーカーに指示した。フランスと米国で行われた疫学研究で、膀胱癌の発生リスクが高まる傾向が認められたが、発癌の中心が高齢者ら長期服用者だったため、薬事・食品衛生審議会安全対策調査会が、糖尿病治療の効果を優先し、活動性膀胱癌患者以外には投与開始前に患者へ十分な説明を行った上で、定期的に尿検査で観察しながら投与を続けるべきと判断した。
今回の取り扱いは当面の措置で、厚労省は医薬品医療機器総合機構や学会と協議して調査報告書をまとめる方針で、必要に応じて追加の対策を検討する。
対象となるのは、武田薬品のアクトス、ソニアス配合錠、メタクト配合錠のほか、後発品を含むピオグリタゾン製剤の全て。
ピオグリタゾンをめぐっては、今月9日にフランスが、武田薬品のアクトスの新規処方の差止めを発表し、ドイツもこれに続いた。米国は15日に膀胱癌患者へのアクトス使用の中止を決めた。
これを受けて、23日の安全対策調査会で対応を検討した。その結果、フランス、米国とも、大規模データベースによる長期研究から、統計的にはリスクが高まる可能性が否定できなかった。ただ、「共通するのは投与期間が長くなるとリスクが増えるということ」「長期投与への警鐘を鳴らす方が先にあるべき」と、米国と同じ結論に至った。また、尿検査による観察が、糖尿病患者では「日常診療の範囲内で行える妥当な処置」と考えた。
今後は、メーカーがリスクに関する情報提供資材を配布して、医療現場の混乱を避けながら、原則使用を続ける。投与中に血尿、頻尿、排尿痛などの症状が出たら直ちに受診するよう患者へ指導することも、添付文書に加える。
なお、欧州医薬品庁は、欧州医薬品評価委員会(CHMP)の月次会議で、ピオグリタゾン製剤投与による膀胱癌の発症リスク増加の有無について、継続して検討していく方針を公表した。有効性や安全性データの評価を行い、7月のCHMP月次会議で、最終的な意見を採択する。