東京都では青少年の健全育成対策の一環として、中学生に社会の一員としての自覚を促すと共に、望ましい社会性や勤労観・職業観を育成することを目的とした、中学生の職場体験事業「わく(W o r k)わく(Work)Week Tokyo」を2005年度から実施している。3~5日程度の期間で、地域の商店・事業所、公的施設等で仕事を体験するもので、7年目の今年は646校、約8万人の中学生が参加する計画だ。
昨年度は、都内の公立中学校625校から7万7527人の生徒が職場体験に参加した。アンケート結果からは、期待された効果が確実に現れていることが分かる。
参加した中学生のほとんどが、職場体験を通して働く意義を理解し、働く上での礼儀の大切さを実感したと回答。「一見小さな仕事でも、全力を尽くすことの重要性を学んだ」「仕事をする時の仲間と協力することの大切さが理解できた」などの声も多く、生徒たちに様々な気づきを与えている。
保護者側でも、子どもの成長を実感すると共に、家庭の中で子どもと向き合いながら考える機会になったなど、評価は高い。また、受け入れた事業所側の約9割が「生徒の態度や様子に変化があった」とする一方で、職場体験を機に業務マニュアルを改めて整備したり、作業の正確性を再確認する事業所も数多い。「仕事を見られていることが、若手職員の刺激になる」などの声もあり、家庭や職場にも好影響を与えているようだ。 この中学生の職場体験事業推進協議会には、金融・福祉・飲食・造園・物流・理美容・書籍・農業をはじめ、都内の様々な企業、団体が委員として参画している。医療関連では医師会・歯科医師会・病院協会・薬剤師会、医薬品小売として日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が名を連ねている。今年度の第1回協議会が先月開かれ、受け入れ産業団体を代表して、JACDSが昨年度の取り組みを報告した。
発表したのは、都内でドラッグストア約130店舗を展開する、ぱぱす(東京墨田区)。計7校から、1校当たり3人前後の生徒を受け入れた。店内の品出しやレジ周りの手伝い、店舗周りの清掃など、医薬品以外の部分での体験が中心となるが、始業前のあいさつや発声練習、顧客への声かけなど、社員と共に真剣に経験することで、社会の一員としての意識を持った生徒も多かったようだ。
同社では、決算時期や店舗オペレーション等で、受け入れ期間や体験時間で難しい面もあったようだが、「地域に密着した店舗展開をしていることもあり、地域貢献の一環として今後も可能な限り、受け入れていきたい」(関根俊明総務人事部課長)という。小売店にとっては、少なからず負担はある。しかし、将来の業界発展という観点から、ぜひ多くのドラッグ企業の参画を期待したい。