アカデミアが持つ医薬品や医療機器のシーズを掘り起こして製品に結びつけるため、産業革新機構と製薬大手の共同出資で立ち上げたライフサイエンス分野の知的財産ファンド「LSIP運営合同会社」が、活動開始から約1年間で、大学・公的研究機関との知財取得や支援の契約を、大筋合意を含めて100出願超に伸ばしている。こうした実績を踏まえ同ファンドは、企業が事業化する際に活用しやすいよう、複数の知財を集約する「バンドリング」の方針を、癌、アルツハイマー、ES細胞/幹細胞、バイオマーカーの4領域ごとに策定し、16日に公表した。
癌領域では、既存薬では腫瘍縮小や延命の効果が乏しい膵臓、腎臓、胆嚢などの難治性癌の治療薬に対する期待や、副作用の少ない薬剤へのニーズが大きい。そのため、「治療薬とバイオマーカーとの組み合わせで、疾患/ターゲット物質および疾患/使用目的/測定物質に基づき、バンドリングを行う」とした。
アルツハイマー領域については、根治薬の開発を目指して「治療薬とバイオマーカーあるいはスクリーニング方法との組み合わせ」を行うという。
幹細胞領域は、実用化のニーズに応じて要素技術を組み合わせる。主な技術として、[1]適用範囲の広い細胞を作る技術[2]特定の細胞に分化誘導する技術[3]増殖・培養方法に関する技術[4]幹細胞や分化細胞等を選択する技術[5]遺伝子等の導入や細胞の支持体を製造する技術――の5点を挙げた。
バイオマーカー領域は、癌と他疾患を分けて対応を整理した。腫瘍マーカーは早期発見、コンパクト診断、創薬ターゲットの特定といった目的ごとに必要となる要素技術を組み合わせる。他の疾患マーカーについては「疾患、使用目的、創薬ターゲットとしての適否、測定物質、測定部位、検出方法等における共通技術についてバンドリング候補を選定する」とした。
LSIPは、知的財産戦略ネットワーク(秋元浩社長)が管理する国内初の知財ファンド。これまでに知財を購入したり支援した大学や研究機関には、科学技術振興機構、熊本大学、くまもとテクノ産業財団、久留米大学、国立がん研究センター、札幌医科大学、千葉大学、北海道大学などがある。
今後は「従来の支援活動に加えて、企業との提携に向けたライセンス活動を展開し、ライフサイエンス産業の発展に寄与することを目指す」としている。