厚生労働省は5日、2014年度診療報酬改定を告示した。今回の改定は、全体の改定率がプラス0・1%になったものの、消費税8%への引き上げに伴うコスト増加分を手当てした1・36%を除けばマイナス1・26%と“実質マイナス”との見方が強い。
限られた財源は、主治医機能や在宅医療を担う診療所などへの評価に振り向ける一方で、重症患者向け病床の削減や同一建物居住者への在宅患者訪問診療料の引き下げ、向精神薬の多剤投与の制限などを通して適正化が図られる。
調剤報酬では、在宅分野で点数が上乗せされた項目があるものの、新設された評価項目はなく、医薬品購入価格の妥結率が毎年9月末日までに50%以下の場合に調剤基本料が引き下げられる未妥結減算ルールが導入された。
また、25点の調剤基本料の特例について、現行の「4000回以上、処方箋集中率が70%以上」は要件を残したまま、新たに「2500回以上、集中率90%以上」の要件を設け、低い特例点数の対象薬局の範囲を広げるなどの適正化が行われた。
ただ、24時間開局して、緊急の調剤ニーズに対応する薬局は除外されることになった。全ての薬局が24時間開局を目指すだけのニーズがあるとは思えないが、地域包括ケアシステムの構築のためには、各地域に少なくとも一つは24時間開局薬局が必要になるというメッセージが読みとれる。
これまで、薬局が単独で24時間、調剤できる体制を整えなくても近隣の薬局と連携して調剤が行える体制を整えておけば算定できた「基準調剤加算1」は、要件を「連携体制を構築する薬局の数を10未満」とする要件の見直しを行った。ある特定の薬局が24時間対応を行っていても、連携していれば算定できたため、連携薬局数に制限を設け、自局が連携のシフトに入ることを前提にした対応をとった。財源が限られる中、こうした“名ばかり算定”に対応するための要件の厳格化や適正化は、今後、ますます徹底されるだろう。
しかし、2月12日の改定案の答申後には、未妥結減算ルールについて、一部の議員から、「卸だけが儲かるおかしな制度」など、ルールの撤廃を求める声が上がったほか、向精神薬の多剤投与の制限では、複数の除外規定が設けられ、いつの間にか適正化が骨抜きにされてしまった。
確かに、医療機関を経営する上で、保険点数は重要な要素の一つで、病院や薬局がつぶれないよう、“あの手この手”を考えるのも分からなくはない。ただ、点数とは、真摯に患者と向き合って仕事をした結果として現れるもので、点数があるから仕事をするというのでは、自ずと限界が見えてくる。
改定内容については、様々な思いがあるだろうが、これから処方箋を薬局に持ってきてくれるお年寄りが減ってくることを考えれば、遅かれ早かれ、処方箋調剤に依存する経営体質からの転換は免れまい。
今回の改定を、地域の患者に寄り添って仕事をするかかりつけ薬局を増やすための契機にできれば、新たな展開が期待できるのではないか。