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薬局での臨床研究推進に期待

2014年09月01日 (月)

 医系団体からの医薬分業バッシングや一般用医薬品のインターネット販売の拡大など、薬局薬剤師を取り巻く環境は厳しさを増している。社会や医療の枠組みにおける薬局薬剤師の存在意義が、改めて問い直されているとも言えよう。医療をより良いものに発展させるため、その中で薬剤師の役割や有用性を示すためにも、薬局薬剤師による臨床研究の推進を活性化させるべきではないだろうか。

 米国では、薬局薬剤師による臨床研究が成果を上げている。通常の服薬指導とは別に薬局薬剤師が行った糖尿病患者へのカウンセリングによって、HbA1c値が低下することを示したアッシュビルプロジェクトなど、様々な臨床研究が実施されてきた。薬剤師の介入は疾患コントロールや医療費削減に役立つとして、報酬が支払われるまでに発展した。

 日本でも、アッシュビルプロジェクトを参考に、医療機関と連携した薬局薬剤師の介入によって糖尿病患者の疾患コントロールが向上した事例など、様々な臨床研究が行われている。

 その一つとして岡田浩氏(国立病院機構京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室研究員)らの研究グループによる「COMPASSプロジェクト」が近年注目を集めた。糖尿病患者を対象に、薬局薬剤師が短時間の動機づけ面接と情報提供を実施し、HbA1c値が低下することを実証したもの。現在は、高血圧患者を対象に同様の介入を実施した際の血圧改善効果を検証する臨床研究を進めており、今秋から研究が本格的に始まる予定だ。

 このように国内でもいくつかの事例はある。ただ、全体に目を転じてみれば、薬局薬剤師による臨床研究はまだ質、量ともに十分ではない。

 研究テーマは実はいくらでもある。薬局薬剤師でしかなし得ないテーマもきっと少なくないはず。日常業務におけるふとした疑問や課題は全て、臨床研究のテーマになり得る。大規模で手間のかかる介入研究だけでなく、比較的取り組みやすい観察研究やアンケート調査も臨床研究の一つ。取り組みやすい臨床研究の形態、テーマから進めることが可能だ。

 薬局薬剤師に必要なのは、臨床研究に取り組む意識だ。医療人の基本的な使命の一つに、研究推進が位置づけられている。患者により良い医療を提供するために臨床研究は欠かせない。医療人の一員である以上、こうした意識を持つことが求められる。

 経験も必要だ。大学と連携するなどし、まずは実施しやすい臨床研究から取り組む。計画から実施、データ解析まで一度ノウハウを身に付ければ次に生かせるし、後輩にも教えられる。

 患者のために臨床研究に取り組むことは、結果的に薬剤師のためにもなる。意識と経験を深めて、薬局薬剤師全体に臨床研究推進の文化を定着させる必要があるだろう。



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