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【バイオベンチャーを探る2】ナノキャリア

2015年07月07日 (火)

核酸医薬開発に挑む‐2年以内に開発候補創出

中冨社長

中冨社長

 ナノキャリアは、ナノ粒子で内包した薬物の血中徐放性を高め、確実に標的抗原へと送達させるドラッグデリバリーシステム(DDS)「ミセル化ナノ粒子技術」で、有効性や安全性に優れた抗癌剤を創出する。抗癌剤「シスプラチン」のミセル化製剤「ナノプラチン」の開発を進めており、膵癌を対象としたアジア第III相試験を実施中。順調に進めば、2017年度に試験を終了し、18年度に第1号製品として上市する予定。さらに今年2月には中外製薬と提携し、DDS技術を応用した核酸医薬品開発にも着手した。中冨一郎社長は、「承認取得後は自社で販売までを手掛けていく。ベンチャーから製薬企業になるのがわれわれの目標」と意気込む。

 同社は1996年に設立し、東京大学の片岡一則教授、東京女子医科大学の岡野光夫教授の研究成果である高分子ミセル化ナノ技術の事業化に向け、2000年から本格稼働した。

 従来の化学療法剤は、癌細胞に強力な抗腫瘍効果を示す一方、副作用を引き起こすのが課題だったが、ナノ粒子内からの薬物放出制御により、抗癌剤の欠点を克服する。抗癌剤を封入したミセル化ナノ粒子の静脈内投与により、血中に薬物が長時間循環したり、癌組織などの病変部に薬物を集積できるほか、副作用を引き起こす濃度以下に調節することが可能で、副作用軽減や効果持続を実現する。

 最も開発が先行するナノプラチンは、シスプラチンの血中半減期30分から100時間へと大幅に延長させた。中冨氏は「現在使われているシスプラチンがナノプラチンに置き換われば、大きなビジネスになる」と話す。膵癌適応で台湾のオリエント・ユーロファーマ社と第III相試験を実施し、18年度に商業化に乗せる方向。非小細胞肺癌で米国第I相試験、固形癌適応で国内第I相試験段階にあり、これら二つの適応で20年上市を目指す。

 第I相試験実施中のオキサリプラチン活性本体「ダハプラチン」、興和と共同開発する「エビルビシン」も含め、合計で三つの臨床入り品目をそろえている。導出品目でも、日本化薬が開発中のパクリタキセルのミセル化製剤が第III相試験と、承認申請が目前だ。

 既存薬剤の付加価値を高めるだけでなく、新たな標的抗原にも対応するため、「抗体薬物結合型ミセル」(ADCM)の実用化に挑む。癌細胞に特異的な抗原を認識する抗体を、ミセル化ナノ粒子表面に結合して、癌組織を狙い撃ちする。エーザイから導入したチューブリン重合阻害剤「E7974」と、標的癌細胞のセンサーとなる抗体をナノ粒子に結合させたADCMの開発を進めており、2~3年以内の臨床入りを目標に掲げる。

 中外と共同研究契約を締結し、癌に関連した異常な蛋白質を作り出す「メッセンジャーRNA」を阻害する創薬アプローチとして、「SiRNA医薬」にも参入した。中外からSiRNAの提供を受け、ナノキャリアが癌細胞まで薬剤を運び、細胞内標的に届けるADCMの開発を担い、核酸医薬が抱える薬物送達性の課題を解決する。2年以内には薬効が期待される開発候補品を創出したい考え。

 中冨氏は、「ナノプラチンを確実に上市へと導き、ADCMで成功事例をつくりたい」と強調。癌の先には、アルツハイマー病など神経変性症疾患をターゲットとした“脳内デリバリー”へと技術を広げる構想を明らかにした。来年で設立20年目を迎え、研究から開発、販売へとバリューチェーンを広げ、ベンチャーから製薬企業へと脱皮を図る。

ナノキャリア
http://www.nanocarrier.co.jp/


この記事は、「薬事日報」本紙および「薬事日報 電子版」の2015年3月23日号に掲載された記事です。

バイオベンチャーを探る1 目次

バイオベンチャーを探る2 目次

バイオベンチャーを探る3 目次



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