生涯研修の重要性を強調
「日進月歩に進歩する医療レベルに薬剤師が対応するには、大学による生涯研修の場の提供が不可欠になる」と、生涯研修の重要性を声高々に強調するのは、神戸薬科大学の北河修治学長だ。神戸薬科大学は、2007年6月に公益財団法人薬剤師認定制度認証機構から西日本の薬系大学では初めて「生涯研修プロバイダー」として認証(G07)を受け、神戸薬科大学エクステンションセンターを設立した。同センターでは、病院や地域医療における医療チームの中で、薬の専門家としての活動が期待される薬剤師の社会的要請をサポートするため、様々な事業を展開している。
北河氏は、神戸薬科大学の究極の目標として、「人材育成と社会貢献」を挙げ、「臨床現場で活躍できる薬剤師の育成には、患者さんの服薬の問題点を見つけ、必要な薬学的知見に基づく指導(改正薬剤師法第25条の2)を行うためには研究マインドが重要になる」と指摘する。
さらに、「臨床現場との教育研究を通じた連携を行って既存の薬剤師のスキルアップを図っていくことも大学の大きな使命である」と力説し、そのためには「生涯研修の充実と医療系の大学、臨床現場との連携の確立が不可欠である」と言い切る。
生涯研修の充実には、同センターが年間を通じて開催している「卒後研修講座」「リカレントセミナー」「健康食品講座」「薬剤師実践塾」などがある。これらの講座は、全ての薬剤師や現役薬学生・大学院生にも門戸を開いているのが特徴だ。
今年度で41回目を数える「卒後研修講座」は、全国屈指の伝統と実績・規模を誇る。毎年、700~800人の受講生が参加しており、最新の医学・薬学情報を総合的かつ体系的に修得できる学術色彩の濃いユニークな講座である。
同講座の講師陣は、全国から第一線で活躍する研究者や臨床家を招き、総論・各論・薬剤師職能に関する最近のトピックスの全9コマで構成されている。今年は、5月24、30、31日の3日間、「代謝・免疫疾患の基礎と臨床」をテーマに開催され、盛況を得た。
「リカレントセミナー」は、「卒後研修講座」のアドバンスト・コースと位置づけられており、専門領域別・職域別に比較的少人数の受講者を対象とする。毎年2~3回定期的に開催されており、疾患と薬物治療の観点から、より高度で重要な学識が取得できる。近年は、在宅医療を中心にプログラムされており、6月は「在宅医療研修・痛みの治療」をテーマに開催された。
同セミナーの今後の開催日とテーマは、9月27日「睡眠障害」、10月18日「薬剤師のためのコーチング―コーチングスキルを用いて患者さんとのコミュニケーション力をアップしよう」、11月15日「在宅医療研修・中級者のためのフィジカルアセスメント―身体所見から見た処方検討」となっている。
「健康食品講座」は、「これからの薬剤師にとってとても重要な職能になるセルフメディケーションやプライマリケア」(北河氏)を見据えて企画している。
「薬剤師実践塾」は、超高齢社会を迎えるに当たり、「在宅医療」をテーマに多くの事例(症例)を交えて行う参加型の実践的研修システムだ。
同総会は全国に17支部あり、公開研修会が年に複数回開催されている。北河氏は、「私自身も同研修会をアシストするために各地を講師として回っているが、さらなる盛況を期待したい」と話す。
現役学生のエクステンション事業への参加状況についても、「最初は受講生が少なかったが、最近は増加している。在学中から最先端の薬剤師職能について学ぶのは非常に意義がある」と強調する。
一方、次世代の医療を担う人材育成のために重要な医療系の大学、臨床現場との連携については、神戸大学医学部との連携を深めると共に、隣接する大学の医療系学部や基幹病院の薬剤部との連携を模索している。
とりわけ、次世代の医療を担う人材育成のためには実践的な教育現場が欠かせないため、地域の薬剤師会との連携や医師会ら多職種連携を深めることを目的として、近い将来「地域連携サテライトキャンパス」の設立も視野に入れる。
北河氏は、「神戸の地から、医療従事者や大学教員、学生、地域住民の連携による成果を発信していき、これらの活動を通じて、神戸薬科大学として地域住民とのつながりを深めると共に、学生のコミュニケーション力、倫理観、使命感を育成したい」と抱負を述べる。
神戸薬科大学エクステンションセンター
http://www.kobepharma-u.ac.jp/