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データ改ざん、治験も総点検を

2015年7月31日 (金)

 北里大学北里研究所病院バイオメディカルリサーチセンターが実施した第I相試験で、健康成人ボランティアのナトリウム値を書き換えるというデータ改ざん事件が発覚した。1症例のナトリウム値が基準値から外れていたため、わずか1mEq/Lだけ上げるデータ改ざんが行われたというものである。

 何らかの理由により、本来は組み入れ基準から除外されるべき症例の臨床検査値データを書き換え、治験に組み入れる必要性に迫られた末の不正行為だったとみられる。

 今回のデータ改ざんについては、内部告発を受けて第三者調査委員会が設置されて調査が行われ、複数証言の中から1例のデータ改ざんが認定された。複数の治験で改ざんが行われていたことや組織的な強制や指示があったことは否定されたが、そもそも内部告発を受けて、どのような形で第三者調査委員会が設置され、調査が行われたのかは内部の人間しか分からない。真実がねじ曲げられた可能性も否定できず、事件の検証プロセスが不透明であることは大きな問題だ。

 しかも不正が発覚した事例は、関係者が「あり得ない」と指摘する臨床検査値の改ざんであり、測定装置から自動的に出された臨床検査値データを誰かが恣意的に書き換えざるを得なかった状況が想像される。

 そこまでして臨床検査値を改ざんしなければならなかったのか、少し数値を変えることが恒常的に行われていて不正の認識がなかったのかは定かではない。

 間違いなく言えるのは明らかなGCP違反であり、参加した健常ボランティアの善意を踏みにじる行為であることだ。

 一昨年には、小林製薬が肥満改善薬として開発を進めていた一般用医薬品において、治験支援業務を担当したSMOのサイトサポート・インスティテュートが身長データの改ざんを行った事例が発覚している。

 そして今度は、第I相試験におけるナトリウム値の改ざんである。まず北里は、最低でも第三者調査委員会の報告書を公開し、社会に説明する義務がある。

 同時に、新薬の治験に関わる全ての関係者にとっても、相次ぐGCP違反について深刻に捉えなければならないだろう。製薬業界や医療関係者に激震をもたらした高血圧治療薬「ディオバン」の医師主導臨床研究データ改ざん事件以降、「日本では治験は法律で規制されているが、臨床研究には法の網がかかっていないという二重基準が問題」との意見が噴出し、臨床研究の新たな法規制につながった。

 しかし、今回の事件を見ても「治験は法律で規制されているから大丈夫」という前提は揺らいでいる。医療現場にも、依然として身長やナトリウム値を少し書き換えても問題ないという時代遅れの認識がないだろうか。

 今こそ治験に携わる全ての関係者は、今回の事件を他山の石として、もう一度、業務を総点検すべきだ。




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