第101回薬剤師国家試験の合格者は前回より2444人増え、過去最多の1万1488人となった。合格率も76.85%で、前回から約14ポイントほど上昇。4年制時代に維持されていた水準に戻った。
合格率が60%台前半にまで落ち込んだ第99回、第100回とは異なり、過去最大の薬剤師が輩出されることになったのだから、薬局の人事担当者などは一安心といったところだろう。
合格率が上昇した要因としては、直近2回の国試に比べて試験問題の難易度を下げた上に、合格基準を緩和したことが考えられる。
試験問題をめぐっては、日本私立薬科大学協会が昨年8月にまとめた「第100回薬剤師国家試験問題検討結果報告書」の中で、「医療機関で希にしか遭遇しない疾患や、薬物治療で第2選択・第3選択の薬剤を問う設問が多いとの指摘があった」とし、「一般的な疾患や第1選択薬を問う問題が主流となるような問題作成を求めている。
合格基準の緩和は、医道審議会薬剤師分科会の国試改善検討部会による「年度によって合格率に大幅な変動が生じ、教育現場の混乱や薬剤師の確保に対する影響が懸念され、決して望ましいとはいえない」との問題意識を踏まえたものだ。
これまでの「総得点率65%以上」という絶対基準から「平均点と標準偏差を用いた相対基準」に変更。必須問題を構成する各科目の足切りを現行の50%から30%に引き下げ、35%に設定されていた理論・実践の各科目の足切りを廃止するなど、大幅に緩和した。
ただ、問題の難易度が低下している状況で、合格基準を緩和してしまうと、合格者数がここまで増えてしまうのかという印象は拭えない。
一方で、私立大学を中心に、合格率をアップさせるために出願しても受験させない大学が多いことには引き続き、注視しなければならない。
6年制新卒者に関して言うと、私立大学では8933人の出願者数に対して受験者数は7556人。1377人もの学生が受験を取りやめている。もはや、事故や病気などという理由では説明し切れない数字だ。
今日から、新たな診療報酬が実施される。「患者のための薬局ビジョン」で示されている「対物業務から対人業務への移行」という方針を踏まえ、改定の目玉とも言える「かかりつけ薬剤師指導料」が新設された。
医薬分業は、これまでの量的な拡大から質への転換を余儀なくされる。しっかりとした教育を受けた学生が薬剤師になり、これまで以上に対人業務を充実させ、生涯学習にも取り組む。このサイクルを循環させることが求められてくる。
とりわけ、入り口段階の教育は多くの課題を抱えている。早急な措置が必要な状態にあることを関係者は強く認識してもらいたい。