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製販後調査の何が問題か

2016年12月09日 (金)

 現行の製造販売後調査には様々な問題があるとして、変革を求める声が強まっている。根本にあるのは、▽製販後調査の多くは形骸化している▽製販後調査で得られたデータの質は低い――などの問題意識だ。そんな調査に多額の費用や人手が投じられていることも問題視されている。

 先月の日本薬剤疫学会学術総会で、日本の製薬会社が製販後調査に投じる費用は年間約1000億円に達するとの推計値が発表された。医療機関に支払った謝礼に、データマネジメント費用、各種業務委託費、印刷費、さらにMRや内部スタッフの人件費を合わせて算出された金額だ。多額の費用が必要になることが明らかになった。

 製販後調査は、日常診療下で医薬品の有効性や安全性を評価し、治験で得られなかった新たな情報を得るためのもの。多額な費用を投じたとしても、それに見合った質の高いエビデンスを構築できればまだいいのだが、多くの場合そうはなっていないようだ。

 そもそも、医師が副作用の疑いを認識しなければ検出されない上、MRが医師から情報を収集するという調査手法によって構造的にも、有害事象の過小報告が生じやすい。実際に添付文書改訂などに結びついた割合は小さく、「かけたリソースの割には医薬品のリスク管理にはほとんど役立っていない」と指摘されている。

 また、GPSP省令によって製販後調査の方法が使用成績調査、特定使用成績調査、製販後臨床試験の三つに限定されていることや、対照群と比較するという概念が欠如していることを問題視する意見もある。今月の日本臨床薬理学会学術総会でも「使用成績調査主体ではほとんどの場合、全体像を知ることしかできない。対照群との比較なしには因果関係を評価できない」と課題が強調された。

 このほか、倫理的にも精度的にも、製販後調査に臨床研究の枠組みを積極的に活用するよう求める声もある。

 こうした問題は行政サイドも把握しているようだ。その解決に向けて2018年度までに医薬品GPSP省令が改正される見通しだ。

 改正は、電子的な医療情報データベースを活用した解析を、製薬会社が製販後調査に役立てられるようにすることが主な目的。23病院の電子カルテ情報などを集約した医療情報データベース「MID-NET」が18年度に本格的に稼働する予定で、その活用を想定している。費用の削減や、収集するデータの精度向上につながるほか、活用にあたっては原則として対照群の設定を求める見通しで、比較の概念が取り入れられる。

 もっとも、それだけにとどまるなら不十分とし、ICHE2E(医薬品安全性監視の計画)に沿って、様々な方法を活用できるようにGPSP省令を全面改正すべきとの提言もある。どこまで踏み込んだ改正になるのか、今後の議論の行方に注目したい。



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