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誰もが納得できる制度作りと実践を

2016年12月26日 (月)

 今年を振り返ると、薬局・薬剤師の重大ニュースとしては「診療報酬改定におけるかかりつけ評価導入」「健康サポート薬局の届け出スタート」が挙げられる。これらの制度は「薬の一元的・継続的管理と気軽な健康相談機能の推進」を目的としているのは言うまでもない。明らかに今年は、医薬分業が“量から質へ転換する”大きなターニングポイントとなった。

 今一度、これからの薬剤師に求められる役割として、▽地域包括ケアシステムへの参画▽医療機関との連携▽高度薬学管理機能▽健康サポート機能▽服薬情報の一元的・継続的把握▽24時間対応・在宅対応――をしっかりと認識しておく必要があるだろう。

 特に、健康サポート機能では、「顧客の健康相談に乗ってOTCやサプリメントを供給し、その人が罹患すれば院外処方箋を応需する。もし、入院して退院すれば、また院外処方箋を応需する」といった“患者のライフステージに合わせてかかりつけ薬局としてかかわる”ことが大きなポイントになると思われる。

 これらを実践すれば、「患者の全ての状態を把握した健康相談や服薬指導が可能になる」からで、有益な新しい制度を生かすも殺すも薬剤師・薬局の取り組みいかんになることを肝に銘じたい。

 一方、製薬産業の分野では、高額薬剤問題が大きな議論を生んだ。悪性黒色腫のオーファンドラッグだった抗癌剤「オプジーボ」の非小細胞肺癌の効能追加をきっかけに、高額薬剤による国民皆保険制度維持に対する危機感が席巻。11月16日の中央社会保険医療協議会で、同剤の薬価が緊急的に50%引き下げられたのは記憶に新しい。

 当初、引き下げ幅は最大25%と見られていたが、国会で野党がさらなる引き下げを要求。政府内からも大幅な引き下げを求める声が強く、来年2月からオプジーボの薬価が50%引き下げられることになった。

 薬価改定時期を外れた薬価の引き下げは、異例中の異例で、日本製薬団体連合会と日本製薬工業協会は連名で「現行ルールを大きく逸脱したもので、今後二度とあってはならない」との声明を発表した。

 オプジーボのように、一つの化合物が10を超える効能効果を取る想定外の薬剤が出現し、従来の薬価制度が適合しなくなったのは否めない。

 とはいえ、突然の薬価引き下げは、新薬の研究開発意欲を低下させる恐れがあり、再びドラッグ・ラグを招くことにもなりかねない。加えて、国の基幹産業という位置づけが揺らぐ可能性もある。実際、米国大統領選後のトランプラリーで湧く堅調な日本の株式相場も、医薬品業界は蚊帳の外に置かれている。

 今後は、薬価制度と皆保険制度のいずれも維持していけるぎりぎりの分岐点を見出して、作る側も使う側も納得できるルール作りが不可欠となるだろう。

 経営予見性が担保できるしっかりとした新しいルールの早急な確立と共に、製薬企業にはそれに基づいたさらなるイノベーション推進を望みたい。



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