医薬情報担当者(MR)教育センターは昨年12月1日、財団法人となって10周年を迎え、3月28日には設立10周年記念パーティーが東京の経団連会館で開かれたことは既報の通りだ。
センターの10年は、MRの質と認知の向上に明け暮れたと言える。パーティーの席上、高久史麿理事長が、「センターはこの10年、MRの認知を高める役割を果たしてきた。これからも社会的認知をさらに高めていきたい」とあいさつしたことからも明らかである。
MRがプロパー(自社製品の宣伝=プロパガンダの意味)と呼ばれていた時代から、倫理・行動面も含めた質を問う声が、医薬品業界自体と医療現場で渦巻いていたことは有名な話であり、一部プロパーの常軌を逸した行動にはいろいろな逸話が残っているほどだ。
その状況から脱却するため医薬品業界が自ら奮起した。一定レベルの質を確保するため、教育研修を実施して、認定制度を創設することとした。質と信頼性を向上させ、それまでの医薬情報担当者・プロパーのイメージを払拭すべく、1991年に呼称変更してMRが誕生した。
MRと呼ばれることになったが、質と信頼性を得るためには、教育研修制度と認定制度を車の両輪として進める必要があり、この両輪をスムーズに回転させる役割を、旧「日本MR教育センター」が担ってきた。
民間機関として同センターが設立されたのは96年で、統一教材のテキストも作成された。公正な認定試験実施に向けて公益法人としての認可を得るための活動を行い、初回試験の97年12月までに、何とか財団法人の認可に漕ぎ着けた。
以来10年間、同センターはMRを雇用するメーカーと一丸となり、教育研修、認定試験制度の改善に取り組んできた。しかし、MRを取り巻く環境も速いスピードで変化しつつあり、現在は、変化に対応するための制度改革を順次行っているところだ。
3月31日には、08年度事業計画が公表された。今年度の目玉は、設立10周年記念事業として全国5会場で開催される「MRフォーラム」であり、MRとMR志望学生を対象としている。もう一つは、同じ記念事業として「MRバッジ」の製作と頒布である。全認定取得者約7万8500人に頒布して、医療関係者と患者に一目でMRと分かるようバッジの着装を図ろうとしている。
パーティーでは、出席者全員に「MR教育センター10年史」が配られた。10年史の最後には、センターの目指す道として、患者の視点で現在取り組んでいる制度改革に触れると共に、「医療関係者を通じて医薬品の適正使用推進に寄与するためにも、MRは医薬品情報を提供し、医療関係者から収集するプロとして、今後も自信と誇りを持って活動する必要がある」と、医療におけるMRの重要性を強く訴えている。
そして、「新たな公益法人制度に向けて、センターも新たな公益法人(公益財団法人)として生まれ変わる必要があるが、MRを通じて患者さんのためになる施策を講じることが、公益法人としての責務である」と、決意を表明して締めくくっている。
国民が眉間にしわを寄せるような団体が多い中、「医薬情報担当者教育センター」には、国民から存在が認められ、必要とされる真の意味での“公益法人”となることを期待する。