開局薬剤師にとって待望されていた“専門薬剤師”への道が開かれた。今月18、19の両日、横浜市で行われた日本緩和医療薬学会が、「緩和薬物療法認定薬剤師」の認定試験を2010年1月から開始することを決定したからだ。この制度は、近い将来の“緩和薬物療法専門薬剤師”認定も視野に入れたものだ。
従来、“専門薬剤師”といえば日本病院薬剤師会が06年度に創設した「がん専門薬剤師」に続き、感染制御専門薬剤師、過渡的な精神科専門薬剤師も誕生している。さらには「妊婦・授乳婦専門薬剤師」「HIV感染症専門薬剤師」の過渡的措置認定が始まろうとしている。しかし、これらの制度は病院での薬剤師業務の専門性を重視したものであり、対象は必然的に日病薬会員に絞られ、実質的に薬局薬剤師が、認定を受けることは困難だ。
学会認定としては「日本臨床薬理学会認定薬剤師」が認定医発足から4年後の95年にスタートしているほか、日本生薬学会による「漢方薬・生薬認定薬剤師」や、若干スタンスが違うが日本糖尿病学会(日本糖尿病療養指導士認定機構)による糖尿病療養指導士として78人が、日本静脈経腸栄養学会によるNST(栄養サポートチーム)専門療養士として240人の薬剤師(NST専門薬剤師)がそれぞれ認定されている。
ここで用いられる「専門」「認定」の呼称は、主宰団体によって意味合い、位置づけがかなり異なっている。この点は9月に日本学術会議(薬学委員会専門薬剤師分科会)がまとめた「専門薬剤師の必要性と今後の展開―医療の質の向上を支えるために」でも指摘されている。
わが国の学術・研究領域における英知が集結した日本学術会議が、専門薬剤師についての提言をまとめた意味は非常に重い。通常は純粋に研究振興に向けた提言等が主体であり、専門薬剤師(専門領域の認定試験に合格した専門領域ごとの薬物療法認定薬剤師)という、薬剤師職能に言及するのは初めてのこと。これも一つの“6年制効果”の表れかもしれない。
その提言では、「日本での専門薬剤師の認定が複数の領域で行われており、それらは、各団体がそれぞれの基準で認定していることが判明した。専門薬剤師の質の保証と更新制による質の向上を図るには、第三者機関によって保証された研修・認定の仕組みが不可欠。米国のBPS(Board of Pharmaceutical Specialities)に相当する組織の設置も含めて検討していかなければならない」としている。初期段階だからこそ第三者機関による保証制度創設は意義あるものかもしれないが、「専門」の定義を含め、関係者間で目指す方向性を確認する必要はある。
一方、在宅医療における薬局・薬剤師の活躍が期待されている中、施設の枠にとらわれない“緩和薬物療法専門薬剤師”は薬局薬剤師にとって、魅力的であり、やり甲斐のある部門だろう。
設置1年半の緩和医療薬学会に、多くの薬局薬剤師を含め、2200人超が参集したのは期待の表れだ。今後、地域医療の進展と共に、在宅での薬剤師の活躍が具体的成果として数多く報告され、学会という場で客観的な検証が行われ、最終的に患者のQOL向上に反映されることが期待される。制度論も重要ではあるが、まずは実績、成果を現場が作り上げていくことが求められる。