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【MR認定制度の抜本改革 患者志向で医療の向上に貢献するMRへ】日本病院薬剤師会副会長 林 昌洋氏に聞く

2021年01月20日 (水)

薬物療法の最適化目指して

林氏

 4月からMR認定センターによる新たな認定制度がスタートする中、今後MRに求められるのは患者視点や医療従事者の立場を理解しながら、医薬品情報の提供・収集を行える医療のパートナーとしての役割だ。薬剤師に対する情報提供も重要な要素であり、患者一人ひとりに対する薬物療法の最適化を実現するために、治験と実臨床のギャップを埋める情報、添付文書を読むだけでは分からない適正使用に必要な情報を届けられるかが大きなカギとなる。MR認定要綱の作成に関わった日本病院薬剤師会の林昌洋副会長に、MR認定要綱の策定にかけた思いや今後のMRに対する期待を語ってもらった。

RMPの理解、説明も必須に

 ――MR認定要綱策定にかけた思い。

 適正使用情報を届けるMRの活動をめぐっては、医療機関への訪問回数や面談回数など販売に関する量的な活動を評価してきた反省があり、販売情報提供活動に関するガイドラインが発出される背景には、適応の範囲を超えた販売活動があったことは事実だと思っている。

 ただ、医師・薬剤師にとって医薬品の有効性・安全性を最大限引き出すための適正使用情報は、患者さん一人ひとりの薬物療法を最適化するために不可欠となり、情報提供の担い手としてMRの役割がある。新医薬品が承認された時点で医薬品の品質、有効性、安全性に関する情報は、要約情報として添付文書、インタビューフォーム、詳細情報として基礎・臨床成績報告書となるCTD、当局の審査にかかる評価として審査報告書が医薬品医療機器総合機構ホームページに公開されているが、膨大な情報から目的とする情報を効率良く得ることは多忙な医師・薬剤師にとって難しい。

 新たなMR認定要綱で「MRの資質」とは、『医薬品の適正使用並びに薬物療法の向上に貢献する専門家として必要とされる知識、科学的な根拠に基づき医薬品の品質・有効性・安全性等の情報を提供、収集、伝達する技能並びに医療従事者はもとより患者・国民からの信頼にこたえる倫理観の三つを言う』と書かれている。こうした専門家の皆さんに、パートナーになっていただけることは、適正使用情報の入手の円滑化につながるものと思っている。

 私自身、1990年から病院薬剤部で医薬情報科長を務める中で様々な優秀なMRに出会い、医療現場が必要とする最適な適正使用情報を提供していただいた経験からも、MRの機能が正しく評価・認識され、活躍できる体制を担保する意味で、今回策定されたMR認定要綱が大きな役割を担うものと期待している。

 ――MRの問題点や課題は。

 製品の自主回収が多く発生する中で、企業作成のお知らせを読み上げるMRに出会うことがとても残念だと感じる。当該ロットだけの回収でいいのか、前後のロットの品質は保たれているのか、科学的根拠に基づく説明が必要だ。

 医師や薬剤師が必要としている情報ニーズを理解せずに、添付文書情報だけを届けるMRでは、e-MRのように電子的な情報伝達手段に代替されてしまうかもしれない。標準化した正確な情報を伝えていくことは大切だが、こうした考え方を突き詰めるとe-MRの方が正確無比となる。

 それでも医療提供体制は地域によって様々で、医療機関でも異なり、それぞれが必要とする情報を電子的に届けるのは難しい。MRと医師・薬剤師間で双方向でのコミュニケーションを行い、全ての医師や薬剤師がそれぞれどんな情報を欲しているかを捉えられるMRとしての感性が大切だ。

 2013年4月以降に承認申請された新医薬品、バイオ後続品については、上市後の安全対策として「医薬品リスク管理計画」(RMP)の作成が義務づけられた。薬剤師にRMPの説明を行っているMRが依然として少ないのも課題だ。

 私が分担研究者として17年度に実施した日本医療研究開発機構研究班による研究では、全国200施設の薬剤部長・薬剤部を対象にMRは自主的にRMPの内容を説明しているか確認したところ、約75%が「まず説明しない」と回答していた。

 RMPは、添付文書には記載されていない追加のリスク最小化活動が書かれてあり、とても貴重な情報源になる。私が所属する病院のスタッフにも必ず読むように指導している。追加のリスク最小化策が必要のない医薬品もあるが、どうして追加のリスク最小化策がないのかをきちんと薬剤師に説明を行うべき。RMPを説明しているMRが少ないことは、MRが営業を最優先するのか、適正使用情報の提供を優先するのか、考えさせる結果となった。

治験と実臨床のギャップ埋める

 ――MRが医療のパートナーになるために何をすべきか。

 私が勤務する病院は、東京の中心部にあり、急性期の高次医療を担うことから、400人近いMRが登録されている。薬剤部長として勤務した24年間で多くのMRに話を聞き、質問や文献提供を依頼した。

 営業部門の研修会で習得したプレゼンテーション内容を一生懸命紹介するMRもいれば、当院の医師の専門性や患者の特徴を踏まえて、補足資料を提供するMRもいた。

 治験は、限られた被験者数で実施され、小児や高齢者、複雑な症例などが除かれており、長期間使用した場合の有効性や安全性に関するエビデンスも不十分だ。治験に基づいた情報のみでは根拠に基づく医療を遂行するのは難しく、患者一人ひとりの薬物療法を最適化するための適正使用情報とならない。

 豊富な医薬品情報を有する製薬企業の代表として医療機関を訪問し、個々の臨床の状況を考え合わせ、臨床家の専門性に配慮して情報提供してくれることが優秀なMRだと思っている。こうしたMRは、先ほど治験で課題となっている点を補うような医薬品情報を提供してくれていた。

 ――今後のMRに対する期待を。

 販売情報提供活動ガイドラインが発出されたが、販売促進を期待した医薬品の情報提供を行う際のあり方を示したものであり、われわれが求める適正使用情報の質と内容は何も変わらないとの認識だ。承認された用法・用量、効能・効果の範囲で情報提供するのは当たり前であり、行き過ぎた販売促進につながる誤った情報提供は控えるべきだと思う。

 ただ、販売情報提供活動ガイドラインに沿って作成された企業内の規定が厳格なルールとなり、医療従事者が必要とする情報を迅速に届けられない状況を生まないようにしていただきたい。MR自身が情報提供できるのか、社内規定に沿って他部門と連携して回答するなど社内でのネットワークから情報のコーディネーターとしての役割を担うことで解決できる話かもしれない。いずれにせよ、適正使用情報が遅滞なく届けられるように活動していただくことを期待している。

 医薬品の適正使用のために院内でプロトコールやフォーミュラリーの作成が増えている。フォーミュラリーというと、後発品やバイオ後続品の使用推進と考えられがちだが、治療の最適化に向けた医師や薬剤師の合意形成として使われている。例えば、特定の診療科で一定の処方経験が積み上がった新薬について別の診療科への拡大、対象患者の制限などの合意形成を進める薬剤部門に対して、治療の最適化に向けた有用な情報提供をしてもらえると、MRと薬剤師がより医療のパートナーとして関係構築できると考えている。




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