調剤作業時間短縮で充実した服薬指導展開
丹後大宮ゆう薬局
丹後大宮ゆう薬局（京都府京丹後市大宮町周枳）は、京都府の日本海側に立地する。京丹後市は、その名の通り丹後ちりめんを基幹産業とし、風光明媚な観光地としても知られている。だが、その一方では、高齢化率が高く、人口減少傾向が急ピッチで進んでいる地域でもあり、18歳以降の若い世代層は少ない。院外処方箋枚数は１カ月に1700～1800枚程度で、基幹病院や近隣の小児科の処方箋が主流を占める。同薬局では、今年３月に大同化工の軟膏ミキサー「マゼリータ」を導入し、調剤作業時間を短縮することで、より充実した服薬指導や在宅対応を展開。「地域で必要とされる薬局」を目指している。
京都府内を中心に64店舗の調剤薬局をチェーン展開する“ゆう薬局グループ”の丹後大宮ゆう薬局は、地域密着型相談薬局で、京丹後市では数少ない在宅対応を実施している薬局である。
左から船戸さん、堀川さん
地元出身の薬剤師で丹後・舞鶴エリアのブロック長を務める船戸一晴さんは、「地域の中できちんと薬剤師職能を発揮して、地域住民や医療機関、介護関連職種の皆さんに必要とされる薬局を目指したい」と力強く抱負を述べる。
丹後大宮ゆう薬局のスタッフは、薬剤師３人、事務２人。薬局での調剤業務や服薬指導、在宅対応など様々な薬剤師業務に従事しており、地域住民や近隣医療機関からの信頼も厚い。
京丹後市の分業率は26％と低いが、同薬局を利用する患者の年齢層は、高齢者から小児まで幅広い。京都府立医科大学北部医療センターなどの基幹病院や、近隣にある小児科、眼科クリニックを中心に院外処方箋を応需している。
在宅対応も依頼や相談増加
子どもに好評な待合室
待合室では小児科受診後の子どもと母親の姿が目立ち、子ども向けの遊具や絵本が充実している。船戸さんは「待合室で遊んでいる子どもに、帰りたくないと泣かれるのが嬉しいです」と語る。小児科で薬が出なくても、薬局に遊びに立ち寄る母と子の姿も珍しくないようだ。
一方、在宅対応はゼロからのスタートであったものの、地道な努力が実を結び、医療機関やケアマネージャーからの依頼や相談が増加してきた。今では、ケアマネージャーから医療機関へ「丹後大宮ゆう薬局の薬剤師さんに来てもらった方が、在宅医療がスムーズにいく」という推薦の声もあがるようになった。
船戸さんは、「在宅の実績を増やすのが目的ではなく、本当に必要とする患者さんにすぐに在宅対応できる連携体制の構築が重要である」と強調し、京丹後市にある他の薬局との連携の重要性を指摘する。近隣地域の在宅対応の輪を広げるため、研修会での講師やセミナーでの情報提供を積極的に行っている。
その一方で、OTC販売に尽力しているのも特徴だ。「店頭販売だけでなく、在宅対応の際に必要なOTC薬や衛生用品（褥瘡用資材など）を届けており、患者さんに喜ばれている」（船戸さん）
調剤時間の律速となる軟膏混合
マゼリータを使っての調剤作業
このように「地域で必要とされる薬局」を目指す丹後大宮ゆう薬局が、軟膏ミキサー「マゼリータ」を導入したのは今年の３月だった。導入のきっかけを同薬局管理薬剤師の堀川利治さんは、「もともとは他社の製品を使っていたが、古くなり故障が目立ってきたので、もう少し良いものがあればと検討していた」と明かす。
近隣の小児科では、喘息などのアレルギー患者が多く、軟膏の混合を必要とする処方が多数を占める。船戸さんは「小児の調剤は、散剤、軟膏とシロップの混合が中心となるが、２～３個処方される軟膏の混合が調剤時間の律速になる」と指摘する。
そのため、「軟膏の混合をいかにバランスよく正確に早く行うかが、患者さんの待ち時間短縮と、われわれが丁寧な服薬指導を行うための大きなポイントになる」（船戸さん）と力説する。
マゼリータを導入した感想として堀川さんは、「以前使っていたミキサーに比べ、仕上がり時間が早い」「回転がトップスピードになるまでの時間が非常に短い」「フリーバランス機能を搭載しているので、０秒で軟膏重量とバランス重量が合致する」「音が静か」などのメリットを挙げる。
船戸さんは、「マゼリータで短縮できた調剤時間を、服薬指導や在宅対応に回せるようになった」と補足する。
船戸さんは、地元コミュニティ放送「FMたんご」のパーソナリティも務めており、医療に関する市民向け情報提供にも余念がない。過疎化が進む地域で、薬局・薬剤師が果たす今後の成果に注目したい。
大同化工
http://www.daido-kako.com/
