こんにちは!グラフィックレコーダーの吉川観奈です。2回目のコラムとなります。読者の皆様に「なるほどね」と思って頂けるよう、ヘルスケアでのグラレコ実践者ならではのお話をしていければと思います。
今回はチームビルディングと結束力をビジュアルでどう支えられるか、と言う目線でお話したいと思います。
さて、会議が終わったあと、チームの一人一人に何が残るでしょうか。
議事録、スライド、To Doリスト、そしてたくさんの言葉、、もちろん、それらは大切な記録です。でも、時間が経ったときにふと振り返って、
「私たち、こんなことを一緒にやったよね(ガッツポーズ)」「このときは本当に大変だった(ウルウル)」「でも、みんなで乗り越えたよね(ジーン)」
と、チームの記憶と感情まで呼び起こしてくれるものは、意外と少ないのではないでしょうか。
私は、そこにビジュアルの力が役立つと思っています。
キックオフミーティング、製品ローンチ、プロジェクトの振り返り、年度末のチームミーティング――。私はこれまで、さまざまなチームの場でグラフィックレコーディングをしてきました。
そこで何度も目にしてきたのが、ビジュアルを見ることで、チームの気持ちがひとつになる瞬間です。
たとえば、昨年度の振り返りで、「こんなことをやったね」「このプロジェクトでは、こんな苦労があったね」「この製品のプロモーションでは、みんな本当に頑張ったよね」そんな一つひとつの出来事をビジュアルとして記録し、最後に絵になったものをみんなで眺める。すると、それまで一人ひとりの中にあった記憶が「私たちチームの記憶」となり、お互いの頑張りに気づき、讃え合う気持ちが自然と生まれてくる。
ビジュアルは、単なる記録を超えるものがあると思います。
チームが一緒に歩いてきた道のりを、もう一度みんなで眺めるための「共有の記憶」になるのです。
そして、ビジュアルの力は過去を振り返るときだけではありません。
「これから私たちはどうしていきたいのか」未来を語る場面でも、大きな力を発揮します。
1つの事例があります。Kickoffミーティングで異なるファンクション同士が同じタイミングで、一緒になって、一つの製品を世の中に届けていく。そんな話がありました。「これからはもっと協力していこう」「一緒に頑張っていこう」素晴らしいメッセージに加え、二人が肩を組み、笑顔で同じ方向を見ているビジュアルが有るとどうでしょうか。その絵は、単なる「二人の人が肩を組んでいる絵」ではなく、その場で語られたメッセージや、チームが目指す未来を象徴するものになり、チームとしてそれは”意味有る絵”になります。時間が経ってもそのビジュアルを見たとき「そうだった。私たちは、この気持ちで頑張っていこうと話したんだった」と思い出すことができる。
ビジュアルが、そのときの言葉だけでなく、その場にあった気持ちや意思まで記憶してくれるのです。
私は、ここにビジュアルの大きな力があると信じています。
そして最近、少し切り口は違いますが、ビジュアルが結束力を高める事を実感した出来事がありました。ある学会のプレゼンテーションのグラフィックレコーディングを担当したときのことです。当初、私はプレゼンターの似顔絵だけを描く予定でした。ところが、座長の方から、「このセッションに関わった、コアメンバーの人たちの似顔絵も描いて欲しいんです!」というリクエストをいただきました。私は、その言葉にはっとしました。それは単に「似顔絵を増やしたい」という意味ではありませんでした。このセッションには、プレゼンターだけではなく、企画や準備など、さまざまな役割を担った多くの人が関わっている。そのことを一目で伝えたいという思いだったのです。名前を並べて「○○さん、○○さんが協力」と書くこともできます。でも、そこに一人ひとりの顔が加わったらどうでしょう。顔と役割、そしてキーワードが組み合わさることで、「このチームがどんな人たちによってつくられているのか」が、一つのストーリーとして見えてきます。「なるほど。これもチームの結束力をビジュアル化するということなんだ」そう気づいた私は、セッション開始30分前というギリギリのタイミングでしたが、超特急でご要望いただいた方々の似顔絵を描き上げ、ビジュアルに加えました。座長の方には、とても喜んでいただきました。そのとき私は、言葉だけで伝えるよりも、ビジュアルには、より強いインパクトと意味を持たせることができると改めて感じました。
ビジュアルは、過去を記録し、今を共有し、未来をイメージするための共通言語になれる。また、「きれいな絵」を描くだけではなく、そのチームが持っている言葉や思いに絵を通じて意味を持たせ、それが心に残るビジュアルになることを大切にしています。
人と人の思いが一つのイメージになったとき、そこには、チームを動かす新しいパワーが生まれる。
私はこれからも、その力をビジュアルを通して届けていきたいと思っています。
プロフィール
グラフィックレコーダー
吉川観奈
ヘルスケア領域を専門とするグラフィックレコーダーとして、複雑な対話や意思決定のプロセスを整理し、共通理解と次のアクションにつながるビジュアルを創り出しています。
2016年、外資系製薬企業在籍時にグラフィックレコーディングと出会い、2021年より本格的に活動を開始。医療・ヘルスケア分野を中心に、日本語・英語の両方で、会議やワークショップ、ビジョン策定、組織対話の可視化を支援しています。
2024年には、世界中のグラフィックレコーダーやファシリテーターが集う国際組織 International Forum of Visual Practitioners の国際サミットに、日本人初の奨学生として参加。2026年より同団体のBoard of Directorに就任。さらに、ドイツ発のビジュアルファシリテーションブランド Neuland のJapan Ambassadorも務めています。
患者会のビジョン・ミッション策定、PPI、コンプライアンス、インクルージョンサミット、プロダクトローンチ、ワークショップなど、多様な場で実績を重ねてきました。
これまでに、外資・内資製薬企業、医薬品開発業務受託機関、患者団体、医療データ関連組織、在日アメリカ商工会議所、医療・臨床開発関連学会、大手外資系金融機関などへの支援実績があります。
Website https://bluebeeink.com/
























