薬歴作成時間を大幅短縮‐見落としのリスクも低減

大手薬局笹崎店
新潟県を地盤とする大手薬局は、笹崎店(長岡市)に三菱電機デジタルイノベーションの「AnyCOMPASS」クラウド型電子薬歴システムに搭載されているAIアシスタント機能を導入し、薬歴作成時間の大幅な短縮と服薬指導の質向上を実現している。AIアシスタント機能の活用により、薬剤師は患者対応や新人薬剤師の教育、地域での活動により多くの時間を充てられるようになった。今後は笹崎店を皮切りに、AIの有効活用を前提として薬剤師の業務改革に対する費用対効果を検証していく考えだ。
AI活用で服薬指導の質向上へ

左から太刀浦氏、髙橋氏
同社は1869年創業、1964年6月に法人化した。長岡市を中心に24店舗を展開しており、患者サービス向上に向けてグループ全体で「在宅」と「DX」の推進に取り組んでいる。
笹崎店は、新たな取り組みを最初に実施する旗艦店に位置づけられている。循環器内科クリニックの門前薬局として昨年11月に開局し、薬剤師2人体制で運営。1日当たり約30枚の処方箋を応需している。店舗面積は他店舗の2~3倍あり、「構造的に様々なことを試すことができる」という。
こうした背景から、開局当初よりDX推進の実証店舗としてAIアシスタント機能を備えた電子薬歴システム「AnyCOMPASS」を導入した。

AIアシスタント機能で簡単に薬歴を作成
同店では1日約30枚の処方箋を応需しているが、薬歴作成に要する時間は処方箋1枚当たり5分から1分へと大幅に短縮された。同店管理薬剤師の髙橋智哉氏は「シンプルに薬歴作成時間を削減できる。内科門前のため処方薬剤数が多く、リスクの高い薬剤もあることから丁寧な薬歴作成が必要だった」と説明する。
服薬指導アドバイス機能では、患者の属性情報や基本情報、処方内容を基に生成AIが最適なヒアリング内容を提案する。その後の服薬指導は音声で取り込むことができ、患者情報や処方内容に会話内容を加味して、生成AIが患者に適したSOAP形式の薬歴を自動作成する。
これにより、薬歴作成時間の削減だけでなく、服薬指導や薬歴の質向上にもつながったという。
髙橋氏は「代表的な副作用について説明することはできても、併用薬を含めた注意点を十分に伝えられていたか分からない部分もあった」と振り返り、薬剤師が意図せず見落とすリスクの低減につながる点を強調する。
「例えば、アルコールを多く摂取する患者には睡眠薬との併用に関する注意を促すほか、運転を職業としている患者にアレルギー薬が処方された場合には眠気の影響を考慮した服薬指導を提案するなど、患者背景と服薬指導を結び付けるアドバイスをAIが提示してくれる」と話す。

調剤室

待合室
また広報室長の太刀浦凌氏は、「AIアシスタント機能は新人薬剤師の教育にも活用できる」と語る。「AIは様々な視点から薬歴を確認し、患者の状況に応じた適切な指導内容を提案してくれる。AIが提案する内容について自身が新人薬剤師に解説する際の教育ツールとしても役立っている」という。
AI活用は対物業務から対人業務へのシフトを後押しし、さらに地域活動の充実にもつながっている。髙橋氏と太刀浦氏はともに学校薬剤師を務めており、「もともと衛生分野に関心があり、今では地域で薬剤の適正使用についての講演やくすりの相談を受ける。こうした地域活動に時間を充てられるのも、AIアシスタント機能の活用による業務効率化の効果だと実感している」(太刀浦氏)
薬学生向けのリクルート活動でも、インターンシップの体験項目として薬歴のAIアシスタント機能活用体験を導入している。太刀浦氏は「AnyCOMPASSのAIアシスタント機能を紹介し、薬剤師がAIを活用しながら働く将来像を示すと、薬学生の関心を引くことができる」と手応えを語る。
AI時代を迎え、今後薬局に求められる資質について聞くと、髙橋氏は「患者さんが相談したいと思える信頼感」、太刀浦氏は「医師や多職種と連携するためのコミュニケーション能力」と回答した。現場の薬剤師がAIの導入によってもたらされる価値を十分に理解し、AIによる業務効率化で創出した時間を対人業務や地域活動に振り向けながら、地域ニーズに応じた新たな役割の創出を目指す考えだ。
長岡市は高齢化率が約32%と比較的高く、同社は在宅医療にも取り組んでいる。現在は長岡市薬剤師会営薬局の無菌調剤設備を利用しているが、今後は笹崎店への導入を計画している。AIを活用しながら患者や地域との接点を増やす――。薬剤師の専門性を生かした新たな価値の創出に取り組む考えだ。
大手薬局笹崎店(三菱電機デジタルイノベーション)
https://www.mdsol.co.jp/melphin/




















