来年度の薬価中間年改定論議が始まった。物価などインフレ局面にあって、デフレ下の仕組みである薬価引き下げありきの議論では、薬物治療は止まりかねない。薬価制度は薬価を下げることが目的ではなく、医療現場で必要な時に必要な医薬品を使用でき、患者がその治療を受けられる環境を維持することにある。薬物治療を止めない観点からの論議を求めたい。
特に、後発品、基礎的医薬品、輸液など日常診療を支える医薬品の製造、供給の対策強化は必須だ。これらの医薬品がなければ、優れた革新的新薬が登場しても治療に生かせない。
後発品を中心とする限定出荷、出荷一時停止は、企業側の努力、政府支援で改善傾向にはある。後発品の品目に占める限定出荷比率は1割を切るまでになった。
しかし、病院薬剤部の話では、1品目でも供給不安事象が起きれば院内在庫や治療への影響確認、代替薬の調整、医師への説明などに翻弄される。特に抗菌薬や輸液がなくなると、手術、救急、生命維持などの治療が止まりかねない。不採算、製造トラブルなどで供給が困難になる事態は避けなければならない。
これらの観点からすると、物価高騰、製造原価上昇を踏まえて全収載品目の引き上げを求める日本製薬団体連合会の意見は理解できる。日薬連によると、国内企業物価指数が2020年比で3割上昇したのに対し、薬価は2割近く下落。製造原価は2割上昇だ。「目下の安定的な製造・供給ばかりか将来の革新的新薬の創出にも大きな影響が懸念される」との訴えはもっともだ。
後発品製造も厳しい。日本ジェネリック製薬協会によると、会員企業の製造施設の約4割が築35年と老朽化が進む。製造原価の上昇は円安で加速し、設備費、建設費の高騰の中では設備更新・新設がままならない。
安定供給は製造だけで完結しない。医薬品卸が機能してこそだが、流通もまた厳しい。その象徴は、仕切価が薬価を上回る対薬価仕切価率100%以上の品目数割合の上昇傾向だ。26年は6.9%、後発品は9.4%。不採算品再算定の薬価20円未満の低薬価品では26.5%に上る。人件費、物流費が上昇する一方で、配送拠点、配送頻度が縮小していると日本医薬品卸売業連合会は指摘し、「地域によっては供給断絶のリスクが高まっている」と訴える。
その上で、重要供給確保医薬品、不採算品再算定品、薬価20円未満の品目の薬価を引き上げてほしいと要求している。
製造、流通、医療現場は一つのサプライチェーンでつながっている。川上で生じた歪みは最終的に患者への薬物治療に悪影響を及ぼす。
その事態を止める観点からの改定論議を望む。さらに厚生労働省は、薬価制度と流通を一体的に議論する機会を設け、制度や運用を再構築に乗り出す必要があると考える。



















