政府の「骨太の方針」原案に「国際水準の治験・臨床試験体制を整備し、国際共同治験の倍増を目指す」と明記されたことは歓迎したい。
新薬は患者の希望だからだ。世界には7000以上の希少疾患があり、そのうち最も新薬が承認されている米国でも承認薬がある疾患は約5%という。それでも未来の新薬の研究開発が行われているのであれば、患者には希望である。疾患が進行し治療法がない場合、治験でさえ治療選択肢になる。
近年の新薬は希少疾患や遺伝子型による適応が多い。少ない適応患者数で研究開発費を回収するには使用患者数を増やす必要がある。そのため欧米等主要国に上市を目指す国際共同治験が増えている。その動きに日本もキャッチアップしなければならない。国際的新薬が日本で上市されないドラッグロスの現実味が増しているからだ。
要因の一つは、米国MFN(最恵国待遇)価格政策により、日本の薬価水準は先進国の中でも低く、米国と比べ3割程度低いと批判されたことがある。日本への開発投資を再検討する欧米企業もある。
また、日本は国際共同治験への参加率が低い。日本製薬工業協会医薬産業政策研究所の調査では、2014年から10年間のアジア主要地域が参加する国際共同治験への日本の参加率は52.8%。注目したいのは治験実施者別で製薬企業主導は62.2%だが、新興企業主導では24.8%にとどまることだ。
新興企業は、今や新薬開発の主要な担い手だ。世界の新薬開発候補品の6割以上を保有する。厚生労働省によると、欧米承認品目で日本未承認は143品目、うち86品目が国内開発未着手で56%がベンチャー発。資金が限られる新興企業が治験のスピードとコストがかかると言われる日本を避けたとの見方もある。
新薬開発の担い手の新興企業が日本を含め国際共同治験を行えるようにしなければならない。政府には規制の見直しと実施環境整備、製薬企業やCROには業務プロセス等の効率化が求められる。その方向を後押しする新GCPへの対応、そして日本CRO協会が日本特有の過剰な業務を削減し、業務プロセスを国際標準化しようと提唱する「No More Too Much」の確実な実行が必要だ。
薬価制度改革も重要だ。骨太原案で「初収載時における適切な評価や特許期間中の薬価のあり方を含め革新的新薬のイノベーションのさらなる評価について検討を進める」と、イノベーション評価の文脈で施策が記述されたことに注目する。特に初収載時薬価を引き上げるのであれば、薬価水準の改善、ドラッグロスを防ぐ一助になり得る。
高市政権では新薬を軸にした成長戦略が謳われる。ただ国と企業が潤うことが目的ではない。大事なのは患者が新薬を使えるようにすることである。患者の希望をつなぐ努力を国と産業に切に望む。


















