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OTC議論から新たな受療文化へ

2026年07月10日 (金)

 昨年、ようやくプロトンポンプ阻害剤(PPI)のスイッチOTC化が実現し、「パリエットS」「タケプロンS」「オメプラールS」が発売された。今年には緊急避妊薬の「ノルレボ」「レソエル72」に続き、ED治療薬「シアリス」、不眠症治療薬「ロゼレム」と、医療用医薬品から一般用医薬品へのスイッチOTC化が相次いでいる。長く停滞感が指摘されてきたスイッチOTC化だが、規制改革実施計画に基づく審査期間の短縮や審査の合理化などの政策転換が動き始めた。

 さらに、政府は現在、OTC類似薬77成分を対象とする一部保険外療養の創設などを盛り込んだ健康保険法等改正案の成立を受け、技術的事項の検討に入った。医療用とOTC薬の効能・効果の違いを整理しながら、小児、難病患者など配慮が必要な患者への対応を決めていく方向だ。

 スイッチOTC化とOTC類似薬をめぐる議論は、これまで十分に進められてこなかった医療機関が担う領域とセルフメディケーションで対応できる領域の役割分担を見直す機会となっている。

 国民皆保険制度の持続可能性を大前提とするならば、今後限られた財源を重症患者や高度な医療を必要とする患者へ重点的に配分する一方、かぜや軽度のアレルギー症状、胃の不調などの軽い症状についてはOTC薬によるセルフケアを基本とする方向性は避けて通れないだろう。

 しかし、制度を変えれば直ちに国民の行動が変わるかどうかは不透明である。わが国では皆保険制度のもと、本来はOTC薬で対応可能な症状でも、まず医療機関を受診するという受療行動が社会に定着してきたからだ。

 これは「フリーアクセス」の良さの裏返しでもあるが、そのためにセルフメディケーションが浸透してこなかった側面もある。結果として、皆保険制度の下支えが国民の健康に寄与してきたものの、少子高齢化の進展でこれまで機能してきた制度の歪みが顕在化しつつあるのではないか。

 OTC類似薬の見直しを単なる給付削減策として進めると混乱を招きかねない。一方で、経済的理由による受診控えや必要な治療の遅れを招かないよう慎重な制度設計も求められる。国民に追加負担を求めるのであれば、同時にスイッチOTCの拡大やセルフメディケーションの環境整備を進め、国民が安心してOTC薬を選択できる環境を整える必要がある。

 その際に重要な役割を果たすのが薬局の薬剤師である。医療機関から薬局への受療行動の移行は簡単ではないが、薬局を受療行動の入口として位置づけ、OTC薬で対応可能な症状なのか、受診が必要なのかを適切に見極める本来の役割を発揮できるよう、制度面での対応も欠かせない。

 皆保険制度をしっかり継続していくために、新たな受療文化を社会全体で育てていく。そうした観点から議論する好機としたい。



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