日本薬剤師会が5月に公表した保険調剤の動向で、2025年度の処方箋枚数が前年度から減少したことが明らかになった。新型コロナウイルス感染拡大による特殊要因を除けば実質的に初のマイナスであり、処方箋受取率(医薬分業率)も82.1%と前年度の82.2%から微減し、頭打ちの様相を示した。
背景には人口減少がある。総務省の国勢調査によると、この5年間で人口は309万人減少し、過去最大の減少幅となった。人口減少は患者数の縮小を通じて処方箋の減少に直結し、医薬分業の進展から約半世紀を経て、保険薬局市場は成熟期から後退局面に入りつつある。処方箋減少はかねてから指摘されてきたが、業界としての新たな市場開拓への備えは十分とは言い難い。
足元では、薬局経営の厳しさが増している。東京商工リサーチや帝国データバンクによると、倒産件数は2年連続で過去最多を更新した。院内処方が一定数残る中で分業率の伸びは限界に達し、量的拡大に依存した従来モデルは成立しにくい。
収益環境も一段と厳しい。処方箋減少に加え、薬価改定による薬剤料の縮小が続き、調剤報酬改定の影響で技術料の伸びも見込みにくい。収益構造の圧迫は避けられない状況だ。
その一因として、薬局数の過剰と小規模乱立がある。後発品で指摘される少量多品種構造と同様、薬局でも分散した供給体制が温存されてきた。都市部で新規開設が続いた結果、需給の歪みが広がっている。
そろそろ薬局数の増加に歯止めをかけるべきだ。全国の薬局は約6万3000軒と増加が続き、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会でも、過去30年間で約63%増加した一方、小規模薬局が多数を占め非効率な体制が温存されていると指摘されている。26年度調剤報酬改定では都市部の新規開設薬局に減算措置が導入されたが、効果が限定的であれば、報酬上の措置にとどまらない保険薬局の総量をコントロールする量的規制の導入も視野に入れて検討すべきと厳しく迫る。
薬剤師についても増加の必要性は乏しいとされ、薬学部定員の見直しを求める議論が強まる。新設ラッシュの影響もあり、国家試験の合格者は定員の8割程度にとどまるなど、教育の質も課題だ。
かつて市場拡大を背景に進んだ薬局と薬剤師の増加は、需要構造の変化の中で再考を迫られている。人口、患者、処方箋の減少に加え、業務の機械化・自動化も進展し、従来型の経営は転換期にある。
今後は量から質への転換が不可欠だ。対人業務の強化や在宅医療、地域包括ケアへの関与など、地域ニーズに応じた機能発揮が求められる。地域の人口や医療資源を踏まえた医薬品提供体制の構築に向け、個々の薬局・薬剤師の能力向上も含めた対応が問われている。




















