グラフィックレコーディングとヘルスケア――見えないものを、見えるようにする力
初めまして!グラフィックレコーダーの吉川観奈です。製薬企業に勤めた後、本格的にヘルスケアグラフィックレコーダーとして活動しています。ペイシェントジャーニーや疾患啓発活動にも微力ながら貢献させていただいています。
グラフィックレコーディングとは言葉だけでは伝わりにくい気持ちの温度感や話し合いを、キーワードや関連するイラストに変換し、ほぼリアルタイムで模造紙やiPadに『記憶の記録』をする事を言います。私はそのグラフィックレコーダーとして主にヘルスケアの分野で活動しています。
今回は薬事日報さんのコラムに第1回寄稿!記念すべき第1回はグラフィックレコーディングとヘルスケアの親和性を経験と可能性として考えているお話を交えてお話させていただきます。
医療の現場には、言葉にしにくいものが、たくさん溢れています。
患者さんが心の中で抱えている不安や、小さな希望。チームの中でなんとなく共有されないまま積み重なっていく気づき。会議で交わされた熱い議論が、議事録という文字の羅列になった瞬間に、すっと消えてしまう熱量。伝えたいのに、うまく伝わらない。わかっているのに、言葉にできない。ヘルスケアの現場で働く方なら、きっと一度はそんな経験をされたことがあるのではないでしょうか。
グラフィックレコーディングは、そんな「見えないもの」を、絵と言葉で丁寧に「見えるもの」に変えていく手法です。会議や講演の場で、その場の言葉をリアルタイムに視覚化することで、その場にいる全員が同じ「絵」を見ながら、一緒に考え、話し、気づくことができる環境が生まれます。
ヘルスケアとグラフィックレコーディングの親和性は、実はとても自然なものだと感じています。医師、看護師、薬剤師、MR、研究者、そして患者さん――これほど多様なバックグラウンドを持つ方々が、ひとつの目標に向かって力を合わせる現場は、他にそう多くありません。
それぞれが異なる言葉を使い、異なる視点から物事を見ています。そんな多職種の場で、共通の「絵」があることは、単なる記録以上の意味を持ちます。言葉の壁を越えて、立場の違いを超えて、「ああ、そういうことだったんですね」という、あたたかな納得の瞬間を生み出すと信じています。
研修や勉強会の場面でも、その力を試してみたいと感じています。新しい治療薬の作用機序、複雑なガイドラインの改訂ポイント、チームで取り組む質改善活動の振り返り――情報量が多く専門性の高い内容ほど、視覚化の効果は大きくなるのではないかと期待しています。
文字がびっしり並んだスライドよりも、手描きのイラストと温かみのある文字でまとめられた一枚の絵の方が、より記憶に残りやすくなる可能性があると感じています。そんな場をいつか一緒につくれたら、、、。
そして、患者さんとのコミュニケーションにも、グラフィックレコーディングの考え方はそっと活きてくる可能性があります。治療の選択肢、療養生活のイメージ、これからの見通し――言葉だけでは受け取りにくい情報も、図や絵で示すことで、患者さん自身が「自分ごと」として理解しやすくなるかもしれません。
インフォームドコンセントの場が、一方的な説明の時間から、一緒に考える対話の時間へと変わっていく――そんな可能性を、グラフィックレコーディングは秘めています。
情報を「伝える」から「伝わる」へ。知識を「共有する」から「共に理解する」へ。誰かの言葉を大切に受け取って、見えるかたちにして返す――その丁寧で温かなグラフィックが、ヘルスケアの現場に、小さくて確かな変化をそっともたらしてくれると、私は信じていますしお役に立てるのではと思っています。
プロフィール
グラフィックレコーダー
吉川観奈
ヘルスケア領域を専門とするグラフィックレコーダーとして、複雑な対話や意思決定のプロセスを整理し、共通理解と次のアクションにつながるビジュアルを創り出しています。
2016年、外資系製薬企業在籍時にグラフィックレコーディングと出会い、2021年より本格的に活動を開始。医療・ヘルスケア分野を中心に、日本語・英語の両方で、会議やワークショップ、ビジョン策定、組織対話の可視化を支援しています。
2024年には、世界中のグラフィックレコーダーやファシリテーターが集う国際組織 International Forum of Visual Practitioners の国際サミットに、日本人初の奨学生として参加。2026年より同団体のBoard of Directorに就任。さらに、ドイツ発のビジュアルファシリテーションブランド Neuland のJapan Ambassadorも務めています。
患者会のビジョン・ミッション策定、PPI、コンプライアンス、インクルージョンサミット、プロダクトローンチ、ワークショップなど、多様な場で実績を重ねてきました。
これまでに、外資・内資製薬企業、医薬品開発業務受託機関、患者団体、医療データ関連組織、在日アメリカ商工会議所、医療・臨床開発関連学会、大手外資系金融機関などへの支援実績があります。
Website https://note.com/kannapple




















