厚生労働省は2027年度予算概算要求で、創薬・先端医療分野の関連施策に1969億円を要求した。創薬力強化に向けた人材育成、治験・臨床試験体制の整備などを柱とする内容であり、創薬力強化を国家戦略として位置付ける姿勢は評価したい。ドラッグラグ・ロスや国際競争力低下への懸念が続く中、日本の創薬基盤を立て直そうとする問題意識は共有できる。
今回の概算要求の背景にあるのは、政府の積極財政路線である。高市政権は「『強く豊かな日本』投資枠」を創設し、創薬やAIなど17の戦略分野への重点投資を進める方針を打ち出した。特に、成長分野や危機管理投資は要求額の上限となるシーリングを撤廃し、大胆な投資を促すとしている。一方で、巨額の投資に見合った効果が伴わなければ財政負担だけが積み上がる。だからこそ、成果の検証が求められる。
今回の創薬関連予算も創薬シーズ実用化推進や創薬人材活用推進、治験ネットワーク整備などは重要な取り組みだが、業界関係者の中にはどこか既視感を覚える向きもあるのではないか。創薬シーズ実用化支援では日本製薬工業協会から人材を派遣し、スタートアップの伴走支援をするという部分はこれまでと違うものの、テーマはほぼ繰り返し掲げられてきた内容だからだ。
もちろん、過去の施策では治験環境の整備やシーズ発掘から実用化など一定の成果も上げてきたが、それが世界市場で競争力を持つ新薬の継続的な創出や日本への研究開発投資の大幅な呼び込みにまで結び付いたかと言えば、十分とは言い難い。今回の概算要求にも既存事業の拡充や延長線上にあるような施策が少なくない。
特にスタートアップ支援は慎重な目利きと明確な出口戦略が求められる。有望な創薬シーズを抱えながら資金不足に直面する企業への支援は必要だが、公的資金の投入ありきになってはいけない。事業性や出口戦略を十分に見極めずに支援対象を広げれば、本来成長が期待できたスタートアップへの資源集中を妨げる恐れもある。
重要なのは、創薬シーズの発掘から臨床開発、承認、事業化までを一体的につなぐことである。個々の施策がそれぞれ独立した事業として終わるのではなく、新薬創出という成果に結実して初めて資金投入に意味があったと言えるだろう。
2000億円近い巨額の予算要求は確かに大きい。しかし、本当に問われるべきなのは金額ではなく、成果である。これまでも「製薬産業を日本の基幹産業に」「創薬立国」とのスローガンが何度も掲げられてきた。
このスローガンが再び言葉だけで終わるのか、それとも関係機関が有機的に連携する創薬エコシステムの実現という成果に結実するのか。今回の予算は金額が大きいだけに、その真価が問われることになる。























