ウェビナー『FSPで変える臨床開発の生産性』で振り返るFSP戦略
なぜ今、FSPモデルが再定義されているのか
臨床開発を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しています。開発パイプラインの不確実性、プロトコールの複雑化、人材確保の難化、そして継続的なコストプレッシャーなど、複数の課題が同時に存在しています。これまで有効だった「人を増やして対応する」というアプローチだけでは、スピードや品質、生産性を維持することが難しくなりつつあります。
こうした背景のもと、グローバルではFSP(Functional Service Provider)モデルが単なるリソース補完の手段から、成果創出を前提とした戦略的モデルへと進化してきました。本ウェビナーでは、このFSPモデルの進化をグローバルおよび日本市場の視点から整理し、日本においてどのように適用すべきかが議論されました。
FSPモデルの進化:人材供給から成果創出へ
従来のFSPモデルは、必要なスキルを持つ人材を迅速に確保し、特定の機能を担うことに主眼が置かれてきました。カバレッジや立ち上がりスピードといった指標が重視され、「人を供給するモデル」として一定の価値を発揮してきたことは事実です。
しかし、臨床開発環境が複雑化する中で、FSPに求められる役割は大きく変化しています。現在のFSPモデルでは、成果を安定的かつ継続的に生み出すことが前提となっています。その中核を成すのが、[1]明確なガバナンスと責任設計、[2]Quality by Designを前提とした業務設計、[3]生産性を継続的に向上させる仕組みです。
FSPはもはや単なる人員提供ではなく、標準化されたオペレーションと改善サイクルを備えた「デリバリーエンジン」として設計されるべきものとして位置づけられています。
なぜモデル転換が求められているのか
FSPモデルの進化を後押ししている要因は明確です。アウトソーシング需要そのものは継続している一方で、臨床開発環境を取り巻くリスクは年々増大しています。R&D予算の制約、プロトコール修正の増加、立ち上がり遅延による機会損失など、従来は見えにくかった「隠れコスト」が顕在化しています。
その結果、単純な人件費比較ではなく、総保有コスト(Total Cost of Ownership)の視点でリソースモデルを設計する必要性が高まっています。また、パイプラインの変動に応じて迅速にリソースを調整できる柔軟性も欠かせません。長期的な効率性と短期的な適応力をどのように両立させるかが、FSPモデル設計における重要なテーマとなっています。
日本市場で成果を生むためのFSP戦略

野村 昌生
サイネオス・ヘルス
FSP 360シニアディレクター
グローバルで進化してきたFSPモデルを日本市場に適用する際、最も重要なのは「そのまま持ち込まない」ことです。日本には、日本特有の運用実態があります。サイトとの関係性、言語や文書化の慣習、品質に対する一貫した高い期待値など、グローバル標準だけでは対応しきれない要素が数多く存在します。
本ウェビナーでは、日本市場で成果を生むためのポイントとして、以下の三点が強調されました。
第一に、ガバナンスを初日から設計することです。責任範囲や意思決定権限、エスカレーション経路を事前に明確にすることで、属人的な判断や手戻りを減らし、意思決定のスピードを高めることができます。
第二に、「Headcount」ではなく「Capability」を構築することです。人数を増やすだけでは持続的な成果は生まれません。標準化されたオンボーディング、体系的なトレーニング、専門性の蓄積が可能な運用設計が不可欠です。
第三に、生産性向上を業務モデルに組み込むことです。生産性向上は単発の施策ではなく、プロセス、テクノロジー、データを活用した継続的な改善の結果として実現されるべきものです。日本向けには、必要な部分のみを丁寧にローカライズすることで、品質とスピードの両立が可能になります。
パートナーシップの現場から見えた示唆
実際にFSPモデルを導入・運用してきた企業の実務責任者の視点からは、いくつかの共通した示唆が語られました。
導入の背景には、限られたリソースの中で生産性を高め、内部リソースをより戦略的な業務に集中させたいという意図があります。一方で、導入初期には期待値のすり合わせ不足や、ガバナンス設計の不十分さから課題が生じるケースも少なくないことが指摘されました。
成功の鍵として共通して挙げられたのは、初期段階での期待値調整、両者が率直に課題を共有できる関係性、そして「任せきりにしない」スポンサー側の関与です。FSPモデルは請負ではなく、スポンサー組織と一体となって機能するパートナーシップである以上、共同責任の意識が生産性と持続性を左右します。
また、KPIについても、単に数値を追うのではなく、その指標が何を測るためのものかという目的を共有することの重要性が強調されました。KPIが現場で形骸化しないためには、目的と成果のつながりをチーム全体で理解することが不可欠です。
グローバル標準を「使える成果」に変えるために
FSPモデルは、あらゆる課題を一度に解決する万能な手段ではありません。しかし、グローバル標準に基づく再現性と、日本市場に即した実行力を適切に組み合わせることで、臨床開発の生産性、品質、そして予見性を同時に高める可能性を持っています。
重要なのは、FSPを単なる人材モデルとして捉えるのではなく、臨床開発戦略の一部として設計・運用することです。どの業務を標準化し、どこをローカライズするのか。どの成果をKPIとして測り、どのように改善につなげていくのか。こうした問いに向き合うことが、日本市場においてFSPモデルを成果につなげるための第一歩となります。
本ウェビナーで共有された視点は、FSP導入の是非を検討している企業にとっても、すでに運用している企業にとっても、自社の臨床開発体制を見直すための実践的なヒントを提供するものといえるでしょう。
About Syneos Health
サイネオス・ヘルス(R)は、バイオ医薬品企業の成功を加速する統合型ソリューション企業です。臨床開発、メディカルアフェアーズ、コマーシャル領域で培った独自のインサイトを活かし、絶えず変化する市場環境の中で最適な成果を生み出しています。
当社では、世界中の専門家が、患者・医師の行動や市場動向を深く理解し、多様な知見を持ち寄っています。最新のテクノロジーと高度なビジネス手法を組み合わせ、重要な治療法をより早く患者のもとへ届ける取り組みを進めています。
誠実でインクルーシブ、そして高いパフォーマンスを重んじる企業文化を原動力とし、社員・お客様・患者・地域社会・地球環境に寄り添う組織づくりを推進しています。
当社のエキスパート達がお客様の成功をどのように後押しできるか、詳しくは syneoshealth.comをご覧ください。



















