3月下旬に横浜市で開かれた日本臨床腫瘍学会学術集会で、簡易懸濁法による経口抗癌薬の投与推進を目指した横浜宣言が採択された。
簡易懸濁法は、嚥下困難な患者を対象に、錠剤やカプセル剤を粉砕・開封せずにそのまま注入器等に入れた後、湯で懸濁させた状態で胃瘻等のルートから経管投与する方法である。薬剤師の実践は進んでいるが、他の医療従事者の認知はまだ十分でないのが現状だ。
学術集会で、がん研究会有明病院薬剤部の小林一男氏が宣言を提案し、賛同を得て採択された。「抗がん薬の簡易懸濁法の適正使用を推進するための横浜宣言」は、▽全ての癌薬物療法における服薬支援は、患者の状態や服薬管理能力を踏まえ、薬剤特性に基づいた最適な剤形を選択することを基本とする▽抗癌薬における簡易懸濁法の活用は、薬剤師が科学的根拠と実臨床での知見に基づき、その可否を判断し、安全性と有効性を担保することで、患者の服薬継続を支える実践的かつ合理的な手段である▽全ての医療従事者は、簡易懸濁法の実施に際し、院内標準手順に基づき、適応薬剤・懸濁条件・手技に関する知識を共有し、医療チームが一体となって安全かつ確実な服薬支援を提供する――の3項目の認識を関係者で共有するもの。
簡易懸濁法は、経口抗癌薬を粉砕せずそのまま注入器等に入れた後に湯で懸濁させる手順を踏むため、調製者への抗癌薬曝露による健康被害の発現リスクを抑えられる。一方、錠剤をすり潰して粉末にした後で水に懸濁し、経管投与する「粉砕法」では調製時に医療従事者や家族が曝露するリスクがある。
宣言には二つの思いが込められている。一つは、嚥下困難な患者に対する経口抗癌薬の投与を粉砕法から簡易懸濁法へと置換し、投与に関わる医療従事者や家族の安全を確保したいという思い。もう一つは、粉砕法による曝露を懸念して嚥下困難な患者への経口抗癌薬投与を回避する事態を、簡易懸濁法の普及によって防ぎたいという思いだ。
小林氏は、胃瘻造設等を受けた癌患者を対象にした国内大規模データ解析で、経口抗癌薬の処方歴がある患者のうち、経口摂取不能期間中に同薬が処方された患者は約1割、処方されなかった患者は約9割いたという報告をもとに、多くの患者では処方が中止されている実態を提示した。
その上で、「経口抗癌薬の服用が困難な患者であっても、経管投与は継続的な薬物療法を可能とする重要な治療選択肢」と述べ、簡易懸濁法の実施を呼びかけた。
簡易懸濁法は薬剤師の倉田なおみ氏らが確立した方法で、日本服薬支援研究会が手技の普及や理解の促進に取り組んできた。今回、医師や看護師ら多職種が集まる同学術集会で宣言を発表できた意義は大きい。さらなる普及に弾みが付きそうだ。




















