「あゆみ塾ジュニア」を開始
狹間氏
薬剤師あゆみの会（大阪市、代表理事狹間研至氏）は、「質の高いコミュニティファーマシストの育成」を理念に掲げ、2006年6月に薬剤師認定制度認証機構（CPC）の認証を受け、生涯研修制度のプロバイダー（G03）として薬剤師向けの様々な研修プログラムを提供している。
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、従来の集合研修の開催が困難となる中、21年度からオンラインを活用した継続的教育プログラム「あゆみ塾」をスタートさせた。研修会の開催形式をオンライン化することで、集合研修の際の移動時間などの制限を考慮する必要がなく、シリーズ化した継続的な研修プログラムを提供。数多くの受講者から高い評価を得ている。
特に、新卒薬剤師や第二新卒薬剤師の初期教育を想定した「あゆみ塾ビギナーズ」では、従来の3泊4日という短期間の合宿研修での実施が難しかったカリキュラムも1年間の長期的スパンで研修プログラムを組むことで実施可能になった。
また、全10回のセミナー開催日とは別の日程で、セミナーに対する受講者の声や近況報告、質問や悩み相談等の受け皿としてオンラインサロンのような場を設けることで、受講者の参加意欲と理解度を高め、より効果的な成果を育んでいく体系的なプログラムも提供しており、受講者や所属先からの満足度も高いようだ。
今年度からは「あゆみ塾ビギナーズ」に加え、初期教育の2年目を想定した「あゆみ塾ジュニア」をスタートさせる。1年間の現場経験をした薬局薬剤師にとって、さらなるコミュニティファーマシストとしての質の向上につなげるプログラムとして、1年間の全10回コースを設定。
「あゆみ塾ジュニア」では、▽処方箋・検査値・薬歴等から患者に起こり得るリスクを読み解く力を身に付ける「処方監査実践とポリファーマシー対策」▽投薬後のフォローのための時間を生み出し、確保するという困難な課題にフォーカスを当て実践できる力を養う「薬剤師のタイムマネジメント」▽患者や家族を支援するメンバーの一人として、在宅における癌終末期対応ができる力を身に付ける「癌治療と緩和ケア」▽コミュニティファーマシストとして地域で活躍していくための地域連携に関する力の習得を目指す「地域包括ケアにおける薬局・薬剤師の役割と地域連携」――の四つのカテゴリーからプログラム構築。
終了後に、希望者に対して同会が認定するジュニアクラス試験を実施し、合格者にはジュニアクラスの称号が授与される。
薬局・病院での臨床経験を有し、さらなるスキルアップを目指す薬剤師を対象とした「あゆみ塾ミドルクラス」では当初、改正医薬品医療機器等法（薬機法）に対応し、在宅医療、OTC販売、組織マネジメントや教育手法を学ぶ機会としてプログラム構築を進めてきた。
しかし、保険薬局企業間で「ミドルクラス」育成への考え方やニーズが多種多様で、組織マネジメントやガバナンス上の権限に差異があり、一貫したプログラムとして構築することが困難だった。
そうした中で、薬剤師のアウトプットスキルの向上という共通の課題も見えてきたことから、今年度はコミュニケーション、チームビルディング、マーケティングの各テーマでセミナーを開催し、対人対応能力の向上を目指す。
21年度には中小薬局経営層を対象とした「あゆみ塾エグゼクティブ」も開催し、同会の役員法人7社から経営者特有の悩みや、その解決に向けた取り組みを披露。これら7社が取り組んできた地域社会とのエンゲージメント、組織を強化するヒューマンリソースマネジメント、財務体質の健全化に向けたマネジメント、医療行政・業界・地域医療ニーズの変化に対応するマーケティングなどのノウハウを、利害関係のない経営者同士で情報交換した。
参加者からは「次回もぜひ参加したい」と好評のようで、今年度は外部講師も交え経営方針の決定や従業員教育など、色々と迷いながら取り組んでいる中小薬局経営層のニーズに応えていく。
これまで研修会等をオンラインで開催することで、様々なメリットを生み出してきた。一方で、バイタルサイン研修といった手技を伴う能力の習得には、リアルでの集合研修でなければ高い効果を得るのが難しいテーマも存在する。
狹間氏は「集合研修の意味は必ずある。オンラインを取り入れた現状の研修を実施しつつ、集合研修とオンライン研修とのハイブリッド構築を本年度は目指していく」と話している。
薬剤師あゆみの会
http://www.ph-ayumi.org/
