R-SUD(再製造単回使用医療機器)については、医療機関の認知度や導入事例が徐々に高まりつつあるものの、歩みが決して早いとは言えない。日本医療機器学会大会ではR-SUDに関する医療現場の動向や普及への課題などをめぐってパネル討論が行われた。その中では、[1]R-SUDの承認品目数が伸び悩んでいる、[2]医療機関にとっては経営上の利点がある一方で、手間がかかるなど負担も大きい、[3]患者にR-SUDで治療を受けるメリットがない――などの問題点が浮き彫りになった。
再製造とは、医療機器製造販売業が医療機関から使用済みのSUD(単回使用医療機器)を収集し、分解、洗浄、部品交換、再組立て、滅菌などの処理を行って再使用を可能にすることを指す。厚生労働省が薬機法第42条第2項の規定に基づき、2017年7月31日付で再製造単回使用医療機器基準を告示し、新たな仕組みを立ち上げた。さらに昨年6月の診療報酬改定では、R-SUDの特定保険医療材料を用いて手術した場合の診療報酬上の加算(再製造単回使用医療機器使用加算)が認められ、医療現場での使用拡大が期待されている。
R-SUDの普及を図る上で、製品数の少なさが大きなネックとして指摘された。厚労省がR-SUDを制度化してから7年が経過したが、現在までに薬事承認されたのは10製品しかない。上塚芳郎氏(松本記念財団理事長)は「今後どのくらい増えていくのか。製品数が少なければ、あまり魅力が出てこない」と述べた。
承認審査する立場の冨田耕太郎氏(厚生労働省医薬局医療機器審査管理課再生医療等審査管理室長)は、承認条件の緩和を図る方針を示した。それによると、R-SUDには承認取得の日から原則として年に1回の定期確認調査が義務づけられているが、滅菌・最終製品の保管にかかる製造所については、その対象から外す等の変更が行われるという。この緩和措置により、再製造に対する企業の取り組み活性化が期待される。
医療機関がR-SUD使用を始める理由として、経営改善への寄与が挙げられている。心臓血管内科医の和田暢氏(国立循環器病研究センター)によれば、心房細動アブレーションで心房中隔穿刺に用いる心腔内超音波カテーテルは高額で、SUDは1本当たり約30万円するが、R-SUDはその約7割の価格で購入でき、9万円のコスト削減になる。加えて償還価格の10%に当たる2万円が診療報酬に加算されるため、経済的メリットは大きいと語った。
しかし、R-SUDを導入することには業務面の負担も伴う。使用済みSUDをメーカーが収集するに当たって、病院側は分別して保管しておく必要があり、その手間がを考慮して採用を躊躇している施設もあると報告された。さらに使用する際には、患者に詳細な説明を行わなければならず、「医師にとってはノイズであり、フラストレーションがある」(和田氏)という。討論では、説明の簡素化を求める声も出された。
患者はR-SUDをどのように見ているのか、冨田氏は再製造SUD基準策定事業で行ったアンケートの結果を引用。R-SUDを使用することに対して患者からは、▽中古品や使い回しではないのか▽本当に安全なのか▽費用が同じなら新品(SUD)を使ってほしい――などの声が上がっていたと紹介した。その上で、「R-SUDは製造工程もSUDと変わりなく、別品目として改めて承認をとっており、新規の製品として扱われている」と述べ、中古品には当たらないことを強調した。
ただ、患者の立場からすれば、R-SUDで治療を受けるメリットは何もない。同じ費用ならSUDで治療してほしいという意識が生じるのも当然と言えよう。和田氏や野中寿太郎氏(日本ストライカーサステイナビリティソリューションズカントリーマネージャー)からは、「患者に選択権やインセンティブを与えることも考えるべきではないか」「ジェネリック医薬品の普及を図ったような形で、患者にメリットを付与できないか」などの提案がなされた。
この点について特に討論はなかったが、仮に患者の自己負担を減額するとなれば、診療報酬点数の引き下げにつながる。そうなると病院側には収入源という負のインセンティブが働いてしまうし、使い回しではないかという患者の懸念も増大しかねないため、非常に難しい対応を求められそうだ。
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