富士フイルムは2日、実験動物を用いることなく化学物質の皮膚へのアレルギー反応の有無を評価できる「毒性予測システム」を開発したと発表した。同システムは、独自のAI技術を活用し開発したコンピュータシミュレーションにより、化学物質の安全性を評価するもので、安全性評価業務のDXをサポートする。
化学物質の皮膚へのアレルギー反応や炎症(かぶれ)の有無を評価する皮膚感作性試験では、動物を用いた試験が行われる場合があるが、動物倫理の観点から、動物実験代替法の開発が求められている。
今回同社は、AI技術を活用して、化学物質の構造から皮膚へのアレルギー反応の有無を予測する新たなシステムを開発した。同システムには、化学物質の生体内での分解過程や構造変換、蛋白質との結合を予測できるよう構築された「知識型AIモデル」と、過去の試験データから化学物質に起因するリンパ球の活性化や増殖、炎症反応を予測する「機械学習型AIモデル」を活用している。これら二つのAIモデルに基づくコンピュータシミュレーションによって、化学物質が生体内で引き起こす事象を高いレベルで推定する。
同システムは、幅広い化学物質の安全性を評価できるだけでなく、動物を用いたLLNA(Local Lymph Node Assay)などの実験方法と比較して評価所要時間が削減できる。
同社は、化学物質に対する社内安全評価業務の一部で、今回開発した同システムと試薬を用いて評価する皮膚感作性試験代替法「ADRA(Amino acid Derivative Reactivity Assay)」を組み合わせることで、今年4月から動物試験を廃止している。これに伴い、皮膚感作性の試験費用を約8割削減し、所要時間を最大20分ノ1と大幅に短縮するなど、評価業務が大幅に効率化された。
同社グループは、2030年度を目標年としたCSR計画「Sustainable Value Plan 2030(SVP2030)」の重点課題の一つとして、「製品・化学物質の安全確保」を掲げ、動物実験代替法の導入を積極的に推進している。
これまでに、高度な分子設計力・化学合成力により独自開発した、検出感度が高い反応試薬を用いた皮膚感作性試験代替法「ADRA」のOECD(経済協力開発機構)テストガイドラインへの収載を実現。また「ADRA」試薬キットの販売、同キットを用いた皮膚感作性評価の受託サービスなどを、富士フイルム和光純薬を通じて展開してきている。
今後、同システムのOECDテストガイドラインへの収載を目指すと共に、システムの提供を通じて、化学物質が環境や健康に影響を与えない世界の実現に貢献していく。
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