OTC緊急避妊薬の一般販売が開始され、約1カ月が経過した。厚生労働省が公表している販売可能店舗は、既に9000軒を超えた。緊急避妊薬の医療機関以外の店頭での販売解禁は、医薬品流通のあり方のほか、日本社会における性教育や情報提供の遅れという課題を浮き彫りにしていると言える。
若者へ性教育を広める活動を展開しているNPO法人ピルコンが今年、緊急避妊薬の販売直前までに実施した意識調査(有効回答5000人)では、緊急避妊薬の存在自体を知っている人は6割強にとどまり、処方箋なしで薬局販売が始まることを「知っている」「聞いたことがある」と答えた人は約4割に過ぎなかった。また、「入手しやすい」と感じている人はごく少数であることが分かった。
同調査では、学校で受けた性教育に「満足している」と答えた人は全体の18%にとどまり、多くが「内容が浅い」「実生活に生かせない」と感じていた。避妊や性的同意、性暴力などのテーマについても「当時もっと知りたかった」「今こそ重要だ」とする声が強く、特に保護者層や女性でその傾向が顕著だった。
それにも関わらず、性に関する信頼できる情報源や相談先を「特に持たない」と答えた人が6割を超えており、知識不足が不安や孤立を招いている実態がうかがえる。
背景には、学校での性教育の不足などがあるのかもしれない。学校教育の段階から避妊や性的同意を含む包括的な性教育を充実させ、正確で信頼できる情報と相談先を社会全体で整備する必要もあるだろう。
緊急避妊薬は単なる医薬品ではなく、性と生殖に関するセーフティネットとしての役割を担う。しかし、販売価格の高さ、販売薬局の限定、薬剤師の面前服用といった運用面は、当事者に心理的・経済的負担を強いているとも考えられる。
調査では、確実に入手できると感じる価格として「3000円未満」を望む声が7割を超え、薬局対応も「迅速さ」や「プライバシーへの配慮」を求める意見が多数を占めた。
一方、流通面について見ると、スイッチOTC化された緊急避妊薬は一般用医薬品卸が担う商品でありながら、実際の販売先は調剤中心の薬局などが中心となりやすい。その結果、医療用医薬品卸が二次卸として関与する過渡的な現象も生じているようだ。
緊急避妊薬は時間との勝負であり、流通の滞りや情報不足は、その価値を著しく損なう。一般用卸と医療用卸が重複するのではなく、補完として機能する明確な流通の設計も重要になる。
医薬品流通の問題も含めて、必要な人が必要な時に、ためらうことなく緊急避妊薬の販売可能な店舗にアクセスでき、購入に至ることができる環境をスムーズに築けるかどうか――。販売する薬局薬剤師の真価が問われる。


















