経験豊富な専門人材が強み‐生成AI併用で品質向上

山本氏
サン・フレアは近年、翻訳サービスに生成AIの導入を加速している。機械翻訳後のポストエディット(PE)の品質管理などに活用を進めている。ただし同社は「完成させるのは人」と強調し、実務経験豊富な元製薬企業経験者をはじめ、様々な分野の専門家をそろえ、人材の強化にも注力している。「ドキュメントCRO」をうたう同社ならではのノウハウを生かし、生成AIにより、専門人材の能力をさらに生かし、新薬開発でますます求められるスピードと品質の実現を図っている。
同社は、製薬企業、アカデミアをはじめ、様々な企業・団体の専門文書の翻訳、ライティングなどを手がける企業だ。日本製薬工業協会加盟会社においても9割以上と取引の実績がある。
同社が近年取り組んできたことは、AI活用の専門部署を立ち上げるなど、AI活用を社内で加速させたことだ。
例を挙げると、生成AIを品質管理に用いるシステムを開発した。一般的な生成AIの活用方法ではアウトプットの精度に限界がある。それに対し同社が開発したシステムでは、セグメントごとに複数の個別指示を一度に行うバッチ処理を実現したことで精度を細かく制御し、レビュワーの作業負担の軽減、スピードの向上に貢献しているという。
PEにおいても生成AIを用い、翻訳中に訳者が出した修正を逐次参照しながら、次の訳文を生成するシステムを開発した。同システムは、翻訳したばかりの文章を参照するため、誤訳や訳語の修正を大きく減らせ、作業スピードの向上に貢献しているという。
ライフサイエンス事業統括の山本耕氏は「社内に自然言語の専門家をはじめ、様々な専門を持つエンジニアを抱えている弊社だからこその開発力が生かされている」と話す。
ライティングにおいても同社は、クライアントとの間で申請資料の作成において、生成AIを使って効率化するプロジェクトを進めている。一般に生成AIを使う取り組みを進めると、ライティングの品質が下がるリスクがある。品質の低下は、申請後の照会事項対応などに余計な時間を要することにつながる。
そのためQCの役割がますます重要になる。ここは、まだまだ人手が主流。山本氏は生成AIの活用を進める上で人手の重要性を強調している。
また製薬企業を取り巻く環境の変化に合わせて、情報セキュリティの強化や環境規制への取り組みを進めている。社内ネットワークの脆弱性診断・ペネトレーションテストや各種環境評価、第三者検証に取り組んでいる。
生成AIの導入を加速する同社だが、山本氏は「機械翻訳とは異なり、生成AIは人が主役になり得る。生成AIの活用が人によるサービスの品質、スピードの向上に大きく貢献すると期待している」と、同社の考え方を説明する。
「AIはインサイトを与えるだけであり、それを完成させるのは人である。そのため、AIに精通したエンジニアだけでなく、実務経験豊富な元製薬企業経験者をはじめ、様々な分野の専門家を集め、また日々、新たな人材を育成している」
今年、薬事関連文書をより大局的に理解するために、元厚生労働省薬系技官で医薬品医療機器総合機構(PMDA)での業務・管理経験のある富永俊義氏を顧問に迎えた。富永氏はICHに参画するなど国内外の規制等に関する知識・経験からの考察力および人脈、加えてレギュラトリーサイエンスに造詣が深い。同社は、富永氏の知見を生かし、クライアントの業務をさらに多面的に支援していきたい考えだ。
サン・フレア
https://adragos-pharma.com/ja/


























