医学、規制、業界ルールに精通‐専門性高いスタッフ陣

三角氏
国際医学情報センター(IMIC)は、医学論文や承認申請資料などに関する通常翻訳を主力としつつ、患者向けの医薬品情報を記載したくすりのしおり、医薬品の科学的な情報をまとめたスタンダードレスポンス文書などの翻訳も数多く手がける。これら文書は翻訳の正確性はもちろん、科学的な妥当性、各種ルールへの準拠、読みやすさへの配慮も必要だ。それを実現する医学、規制、業界ルール(例えば製品情報概要作成要領、医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領など)といった、必要な背景知識を備えた高い専門性を持つスタッフ体制が同センターの特徴といえる。
IMIC(アイミック)は、1972年に慶應義塾大学信濃町メディアセンター(北里記念医学図書館)を母体として設立された。国内外の医薬情報の収集・解析、提供を目的にしている。2013年に一般財団法人に移行した。理事長は消化器外科医で慶應義塾副学長の北川雄光氏。承認前文書など機密性の高い情報を扱うことから情報セキュリティを徹底するためセンター全体でISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を来年度に取得予定だ。
翻訳サービスは製薬企業、医療機器メーカーなど50社程度と取り引きがあるという。センターでは、文献データベース検索代行、文献複写、資材作成支援、メディカルライティング支援、ファーマコビジランス支援といったサービスも行っている。それら医学・薬学分野のサービスと連携しながら翻訳サービスを提供できるのが強みだ。
例えば、文献検索から必要文献の複写、そこから抄録作成、翻訳ということも可能だ。また、ファーマコビジランス支援ではCIOMSフォーム翻訳や医療機器の不具合報告の翻訳と連携する。資材作成支援ではインタビューフォーム内の添付文書翻訳、患者向け医薬品ガイドと連携したくすりのしおりとその英訳版の作成もできる。
近年、製薬企業からの要望が高まっているのが業界ルールを踏まえた翻訳。そのほか、くすりのしおりについては作成、翻訳に加え、くすりの適正使用協議会のシステムへのアップロード。医療機器の不具合報告では、PMDAの所定の書式に基づく作成支援。そのような付随業務の求めも増え、対応しているという。
これら業務を支えているのは同センターの専門人材だ。同センターの基本は、原文を深く理解した上で人が翻訳すること。AI翻訳は活用していない。ただセンターではAI翻訳の癖や注意点の検証を行いながら、実践的な知識を蓄えている。
実際、AI翻訳による訳文を翻訳者がチェックするポストエディットの依頼も増えてきており、対応できる体制を整えている。
また、AI翻訳に頼らないスキルを身に着けるための「英語論文の読み方」をテーマにした外部セミナーを企画したところ、好評を博した。
製薬企業向け翻訳を担当する医薬情報部医薬情報第三課の三角睦子課長代理は、「翻訳のクオリティはAI翻訳だけでは十分に担保できないというのが、IMICの翻訳スタンスである」と説明する。とはいえAI翻訳について同センターは、そのトレンドを常にウォッチしており、前述のポストエディット体制など、将来を見据えた準備を進めているという。
国際医学情報センター
https://www.imic.or.jp/


























