アガサは、治験・臨床研究を中心に、膨大な文書やプロセスを電子化するクラウドソリューション「Agatha」を開発・提供している。医療機関と製薬企業の双方にとって、よりスマートな治験業務環境の構築を目指しており、医療機関シェアは約66%、製薬企業シェアは約80%、ユーザー数は7万を超える。さらにはAIが文書種別を自動判別し、所定のフォルダに振り分ける機能の提供もスタートした。同社の取り組み、今後について鎌倉千恵美社長に聞いた。鎌倉氏は、「Agatha」が世界の臨床試験プラットフォームとして確立することを目指したいと強調する。
医療機関と企業双方の効率化支援
――設立は2015年。鎌倉さんは、設立前も他社で医療機関・製薬企業向けソリューションの開発などに携わってきた。アガサで目指したことは。
かつて治験・臨床研究において医療機関・製薬企業とのコミュニケーションは全て紙で行われていた。紙の資料は一部が数百ページにも上ることもあり、かつ種類も多岐にわたることから膨大な事務処理工数がかかる。一方、既存の文書管理システムは高価で導入しづらい。
この課題に対し、私たちは電子化によるシンプルなソリューションを提案し、治験・臨床研究の効率化・省力化に貢献したい。
――その中で「アガサ流」は。
医療機関と製薬企業双方の文書管理の電子化を進めるところにある。製薬企業向けの文書管理システムはあったが、双方の電子化なしに課題解決、効率化・省力化はできない。そして、特に医療機関より強く求められたシンプルな操作性も実現した。ある医療機関では紙で文書管理をする場合、治験依頼に関する文書1部あたり500枚を46部作成する必要があり、合計で約2万3000枚(段ボール箱10箱分)を準備する必要があった。作業時間は23時間にも上り、さらに不要となった文書は溶解処理を行わなければならなかった。
当社ソリューションを導入した場合の一例だが、治験実施依頼が医療機関で承認されるまで、電子化以前の70工程を20工程に削減できる。私たちは医療・ライフサイエンス分野に特化し、必要な法規制への対応も万全にしながら、必要な文書の作成、共有、レビュー、承認、保管を一貫して電子化することで業務の効率化・省力化を実現している。
――そのソリューションとは。
基本的な文書管理とファイル共有を担う「Agatha Basic」、治験施設とIRB対応を効率化する「施設文書保管+IRB」、品質業務を支援する「Agatha QMS」を中核に、eTMF、SOP、CTMSなど多様なクラウドソリューションを展開している。
――日本ではドラッグラグ・ドラッグロスが社会問題化し、その改善には日本の治験実施環境の改善が急務。どう貢献していくか。
まずは、テクノロジーを使って日本でグローバル試験がしやすい環境にしていく「治験エコシステム」に貢献していきたい。次はAIを使った自動化でさらなる効率化を進めていきたい。既に広く使われている当社のプラットフォームを基盤に、AIの新機能で業務の工数をさらに削減していく。
――具体的には。
AI新機能の第一弾として今年7月1日に当社クラウドソリューション「Agatha」において、文書登録業務を支援する「文書登録補助機能」をリリースした。治験における文書登録は、製薬企業のCRAや医療機関スタッフにとって煩雑な作業である中、正確性やスピードが求められる。
施設ごとに異なるルールに丁寧に対応しており、効率化によって業務価値を一層高められる。そこでAIが、文書種別を自動判別、フォルダ振り分け、フォルダ名作成も支援する新たな機能を実装した。
アガサならではの治験ドキュメントのデータ資産を活用し、実証実験では分類・振り分け精度は95.5~100%、日付情報の自動取得精度は100%を実現している。
結果として業務工数の削減は平均55%、最大で80%を見込む(製薬企業4社、医療機関2機関にて実証実験を実施)
また近年、品質や安定供給への関心が高まり、品質保証・管理の重要性がクローズアップされている。これを踏まえアガサでは、規制改訂や文書修正時に影響を受ける関連文書を自動的に検出する機能や、事象のインプットから原因・影響・対策をドラフト化する自動文書生成機能(逸脱・CAPA・監査対応)などのAI機能を開発中で、26年のリリースを目指している。
さらに、アガサは治験文書データにおいて国内トップクラスの蓄積を有しており、昨今のAI技術の進展により非構造化データも含めた活用が可能となっている。これを基盤に、新たなデータビジネスの開発にも取り組んでいきたい。
――今後の目指すところは。
まず、日本においてテクノロジーの力で医療とライフサイエンスをつなぐプラットフォームとして確立させ、世界中の医療機関や製薬企業の発展を支えるインフラとなることを目指したい。1日でも早く、患者さんへより良い治療法を届けられるよう、私たちは「世界中の人々の健やかな人生のために」貢献を果たしていきたい。














