
玉井氏
一般社団法人米国医療機器・IVD工業会(AMDD)(東京・東新橋汐留、玉井孝直会長)の新年恒例年頭記者会見が26日、東京・赤阪の赤坂インターシティコンファレンスで行われ、玉井会長がAMDDの2025年の活動を振り返るとともに2026年の活動方針を発表し、2026年は引き続きバリューベースヘルスケアを推進するという方向性のもと、メドテックイノベーションを医療現場に届ける活動やメドテックの価値を伝える活動、デジタルヘルス推進に向けた活動に取り組んでいくと語った。続いてメドテックイノベーションと情報の価値などをテーマにパネルディスカッションが行われた。
1.AMDD 2025年活動と2026年方針について
2025年度の主な活動
玉井会長(ジョンソン・エンド・ジョンソン社長)は、2025年の主な活動として、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針)に対して(1)物価高騰やコスト増に対応した保険医療材料制度の検討、(2)デバイスロス・デバイスラグ解消のための薬事規制の国際整合の更なる推進、(3)デジタルヘルス技術を見据えた診療報酬上の評価の推進、(4)官民連携による医療データの二次利用の推進と製品開発への利用等――を盛り込むよう提言し、こうした主張を補うような形で、日本医師会とAdvaMed(米国の先進医療技術工業会)共催のシンポジウム開催、厚生労働省や医療機器業界との定期会合開催、さらに(1)2026年診療報酬改定に向けた提言、(2)人々のヘルスリテラシー向上に向けた取り組み、(3)デジタルヘルス領域における情報収集、分析、提言を行ったと説明した。
日本の医療を取り巻く課題
このような活動に至る日本医療の現状については、超高齢化に伴い医療ニーズが増大していること、人々のヘルスリテラシー向上が必要なこと、病院の経営難と医療人材の不足が生じていること、技術活用に向けた環境整備が整っていないこと(結果としてデバイスロスやイノベーションの日本への未導入)、国家財政の制約下で医療・社会保障費の増大に対応しなければならないことなどがあるという認識を示した。そしてデバイスロスやノベーションの日本への未導入という問題については、「ジャパンパッシングの可能性があり」、「このままの状況が続くと、コストや為替の関係などもあるが、今まで導入されていた医療機器やその他のサービス・テクノロジーが日本に入ってこなくなるという将来も想像される」と指摘した。一方で、AMDDが提言しているバリューベースヘルスケアが、「一つのソリューションになってくると考えている」とも述べた。
価値に基づく医療:バリューべースヘルスケア
「価値に基づく医療:バリューべースヘルスケア」は従来からAMDDが主張しているものであるが、今回は「AMDDの理事・メンバーをあげて、いろんなステークホルダーの方によりわかりやすくするためにはどう定義すればいいだろうかということを半年間かけて整備した」という。資料によればバリューベースヘルスケアとは、〈患者さんにとって意義ある治療効果(アウトカム)の最大化〉と〈医療エコシステムのトータルコストの最適化〉を「同時に実現する医療」であり、「この医療の『価値』を評価し、『価値』に基づいて意思決定する医療の考え方」である。アウトカムの指標は「生きがいをもって暮らし働き続けられるQOL、健康寿命延伸」などであり、トータルコストは「医療を支える環境全体に必要となるコスト・投資」であり、トータルコストには「イノベーション、物流、教育」に係るコスト・投資なども含まれると説明されている。このコストは「最適化」すべきものと表現されており、「最小化」を目指すものではない。
そして、バリューベースヘルスケアの実現によって、「価値あるイノベーションが日本の医療現場に届き、適切な医療の選択肢が患者さんに提供され」ることなどを目指すとしている。

左から小野崎氏、大幸氏、玉井氏
2026年度活動の方向性
このようなバリューベースヘルスケアを推進するという方向性のもと、2026年度は、(1)メドテックイノベーションを医療現場に届ける活動:2028年度診療報酬改定に向けた提言やデバイスロス・ラグ解消など、(2)メドテックの価値を伝える活動:人々のヘルスリテラシー向上に向けた取り組みや広告・情報提供の在り方検討など、(3)デジタルヘルス推進に向けた活動:医師の働き方改革や僻地医療への活用検討など――を注力エリアとして取り組んでいくとしている。
2.パネルディスカッション
記者会見の後半は、一般社団法人サステナヘルス代表理事/聖路加国際大学公衆衛生大学院客員教授の小野崎耕平(おのざきこうへい)氏、国立がん研究センター中央病院食道外科科長の大幸宏幸(だいこうひろゆき)氏、玉井氏(ファシリテーターとして)によるメドテックイノベーションと情報の価値などをテーマにしたパネルディスカッションが行われた。
ヘルスリテラシーは重要
まず小野崎氏が、自身が経験し成功した食道がんのロボット手術について、成功の要因として「医学の素人ではあるけれども若干の土地勘いわゆるヘルスリテラシーが多少なりともあった」こと、日本の医療のアクセスのよさ、低侵襲のロボット手術などをあげた。ロボット手術については、「メーカーにいるとき(ジョンソン・エンド・ジョンソンに所属していた)は、低侵襲の手術を提供する側にいたけど、その頃にはその本当の価値がわかっていなかった。実際自分が受けてみると傷が小さい。例えば、出血量は60ccだった」。また、「テクノロジーによって早期離床、早期社会復帰、そういう労働生産性が向上するみたいな、そういうことを痛感した」と述べた。
小野崎氏の手術を執刀した大幸氏はこれに対して、「ヘルスリテラシーがしっかりしていた、理解していたからこそ、タイムラグなく、QOL高く、社会復帰されたのだと思う」と述べた。また、玉井氏の「ヘルスリテラシーの高い患者さんとそうでない患者さんで治療の過程やアウトカムの違いを感じるか」との質問に対して「すごく強く感じる」と答えた。
テクノロジーは医療従事者のQOLも上げる
また、大幸氏はロボット手術などテクノロジーの恩恵について、低侵襲性手術で合併症が減って手間もあまりかからなくなったこと、疲労度合いも相当軽くなったことなどもあり、「患者さんのみならず、医療従事者のQOLを上げるという恩恵も大きい」と述べた。
米国医療機器・IVD工業会(American Medical Devices and Diagnostics Manufacturers’ Association:AMDD)は、メディカルテクノロジー(メドテック)、つまり医療機器や体外診断用医薬品(IVD)を取り扱う、米国に本社がある、又は米国でビジネスをしている日本法人などが加盟する業界団体。2009年設立。1月現在の会員社数は77社、賛助会員社数は11社。

左から小野崎氏、大幸氏、玉井氏
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