第100回医療機器学会併設のメディカルショージャパン・ビジネスエキスポ2025の公開セミナーI「医療機器産業の未来と展望」が13日午後1時から行われた。この中で「医療機器産業の未来と展望~適正使用支援ガイドラインの普及に向けて~」をテーマに講演した日本医療機器販売業協会副会長でクロスウィルメディカル社長の阿部篤仁氏は、慎重に言葉を選びながら特に「預託在庫」の問題点を指摘した。

「適正使用支援ガイドライン」は、字義的には医療機関が医療機器の適正使用を行えるように医療機器販売業が医療機関を支援するといった趣旨の業界自主ルール。要は、適正な商取引を目指すものと言えるが、まずは「預託在庫」と「緊急対応」について定められており、昨年4月から実施されている。
阿部氏は、医薬品は、病院の薬剤部が中心となって注文等が行われているが、医療機器は、用度課やSPD(Supply Processing and Distribution)の部署、あるいは医師や看護師から直接オーダーが来るという特徴があると述べ、まず医薬品と医療機器の販売業の違いを述べた。その上で、医療機器販売業の役割としては、医療を支えるインフラの役割と多種類の医療機器に応じた適正使用支援業務の役割があり、その適正使用支援業務の一つに「預託在庫」があると述べた。預託在庫というのは「いわゆる富山の薬売り」のようなもので、「本来、医療機関が在庫として保有すべき医療機器を、販売業者とメーカーが医療機関の中に配置し、管理を販売業者が代行する」という方式。「医療機関が使用した時点で売買が成立するが、預託在庫という特性上、使用された製品は即日か翌日には補充しなければいけない」という。
阿部氏によれば、預託在庫管理には、(1)使用期限切れ製品廃棄の減少、(2)緊急対応の頻度の減少、(3)販売機会の創出――というメリットはあるものの、(1)在庫補充や使用期限管理のために毎日訪問する必要があるにもかかわらず、その多くの作業は無償である、(2)医療機器販売業の在庫の半数近くが預託在庫であり、預託在庫管理は経営上、重要事項である――というデメリットがある。「大きい病院では数千万円の預託在庫も珍しくなく、現在デメリットの方が医療機器販売業に大きくのしかかっている」と阿部氏。また、預託在庫は責任の所在が曖昧で、例えば「1本数十万円のカテーテルが紛失して、それを販売業者が負担するということもある」とのこと。このような商習慣は、「付帯サービスを無償で行っても採算が取れていた」時代の名残とも言える。
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