富士フイルムと名古屋市立大学は22日、頭部CT画像上で脳脊髄液腔の各領域を抽出するAI技術を共同開発したと発表した。同技術によって、「治療で改善できる認知症」と言われ早期発見が重要なハキム病(特発性正常圧水頭症:iNPH)の診断精度向上が期待できる。今後、富士フイルムは、同技術を搭載した製品の早期市場導入を目指していく。
今回、両者は、富士フイルムのクラウド型AI施術開発支援サービス「SYNAPSE Creative Space」を用いて、頭部CT画像上でくも膜下腔の不均衡分布(DESH)に関係する脳脊髄液腔の各領域(高位円蓋部・正中のくも膜下腔、シルビウス裂・脳底槽、脳室)を抽出するAI技術を開発した。
同技術は、両者が2024年3月に開発発表した、MRI画像上で脳脊髄液腔の各領域を抽出するAI技術を発展させたもので、MRI検査と比べて検査時間が短いことなどから、医療現場で広く普及しているCT検査向けに発展されたものとなっている。
同技術は、頭部CT画像上でDESHに関係する各領域のアノテーション作業を効率的に行い作成したデータをAIに学習させて開発したもので、CT画像上で脳脊髄液腔の各領域を抽出できる。さらに、領域ごとの体積や領域間の体積比を算出することで、脳萎縮とハキム病の判別に重要な画像所見であるDESHの判定に大きく寄与し、ハキム病の診断精度向上につながることが期待される。
同技術によって、転倒などで頭部を打撲して病院を受診した患者が頭部CT検査を受けた際、医師はそのCT画像から打撲による影響だけでなくDESHの兆候も合わせて見つけることができるなど、ハキム病の早期発見につながる可能性が高まる。
ハキム病は、脳に水(脳脊髄液)が溜まって脳を圧迫し、歩行障害、認知障害、切迫性尿失禁などの症状が現れる高齢者に多い進行性の病気で症状が重くなると日常生活に介護が必要となる。
またハキム病は、同様の症状が生じる脳委縮との判別が難しいことから、発見が遅れてしまうことがある。脳萎縮とハキム病を判別するには、DESHを発見することが重要だが、DESHは医師の主観で評価されているため、医師によって判定が異なることが課題だったが、同技術を用いることで、その判定が可能になることが期待される。
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