わたしの「1日」~業界の先輩に聞く~ サンロクゴ訪問薬局目黒店 高浦知沙さん

2026年01月20日 (火)

在宅対応薬局の輪広げる

高浦知沙さん

 高浦知沙さんは在宅医療に特化したサンロクゴ訪問薬局目黒店で働く薬剤師だ。2024年12月の同薬局立ち上げに携わり、管理薬剤師を務める。末期癌など100人超の患者宅訪問に対応。訪問や調剤業務だけでなく、在宅医療に関心を持つ薬局へのコンサルティング業務なども担い、在宅対応薬局の輪を広げたい考えだ。

 同店は、末期癌、心不全、間質性肺炎、認知症などの患者140人超の在宅医療を担っている。

高浦さんの1日

 昨年5月のある日。高浦さんは9時に出勤し、10時までに、その日に訪問予定の患者や担当薬剤師を確認し、訪問の準備を行った。

 薬局全体で1日に訪問する患者宅は15軒ほどだ。訪問先は目黒区、品川区、渋谷区など近隣の区が多い。10時から訪問を開始し、訪問先で服薬状況や体調を確認しながら薬歴を作成。13時頃に薬局に戻った。

 休憩を取り、14時から午後の訪問に関する調整を行った。この日は予定外の患者宅への薬剤配送が入り、高浦さんが調剤を担当した。

 15時から午後の訪問をスタートし、17時頃に薬局に戻り、薬歴を仕上げた。医師やケアマネージャーなど他職種への訪問報告も行い、18時にこの日の業務を終えた。

 同店では、高浦さんを含め薬剤師3人、医療事務1人が勤務する。管理薬剤師として、処方箋の内容から調剤の優先度を判断する「司令塔」の役割を担い、一包化や注射薬の調製、在庫管理などの業務も高浦さんが担当している。

 患者宅を訪問しない日は、10時から12時にかけて前日や当日受付分の調剤を行い、14時頃からも当日受付分の調剤などに対応する。高浦さんは、「前回訪問時の記録から処方内容を変更・調整するほか、他職種への電話連絡も多い」と説明する。

 昨夏から、在宅医療への対応を検討する薬局のコンサルティングを行う業務も始めた。輸液、医療用麻薬、医療用ポンプなどの取り扱いについて、適切な相談相手を見つけられない薬局は少なくないという。ウェブと対面を組み合わせ、在宅医療に特化した勉強会を月2回のペースで行っている。現在は世田谷区と大田区の薬局から相談を受けており、「将来的にどの薬局でも医療依存度の高い在宅患者を受け入れる体制が整ってほしい」と見据える。

 在宅医療のやりがいとして、「患者さんに急変があった時に対応できる薬局がなければ、末期癌の患者さんなどは在宅療養が難しい。自宅で看取りたいとのご家族の希望が叶い、私たちが関わったことでご家族と過ごす時間を持てたと思えることが大きな励みになっている」と語る。

 高浦さんは、12年に6年制薬学部の1期生として東京理科大学薬学部を卒業。自分自身の健康を自らの責任で管理するセルフメディケーションに関心を持ち、ドラッグストアに新卒で就職したが、実際の業務は調剤が中心だった。外来調剤は薬剤師が担う重要な仕事だが、業務の多くが対物に偏っており、薬剤師としても外来患者の調剤だけでは生き残りは難しくなると感じていた。外来患者が入院したり通院が難しくなったりした際にシームレスな医療を支えるには、外来調剤だけでは十分ではないとも考えた。薬局のカウンター越しに見る一瞬の姿だけでなく、患者が自宅でどのように薬と向き合い、生活しているのかを知りたいとの思いが次第に強まっていった。

 ドラッグストア勤務2年目で結婚。家庭に専念することも考えたが、夫の勧めもあって社会人経験の継続が重要と捉え、薬剤師として勤務し続ける決断をした。今後の薬剤師に求められる職能であり、賃金を度外視しても全力投球できる領域は在宅医療と考え、在宅医療に特化した在宅訪問薬局に転職した。転職先では、高齢者施設や個人宅の在宅訪問を一通り経験したが、部門整理により在宅訪問薬局としての体制が見直されて外来調剤が主軸となったため、高浦さんは在宅医療に携われる薬局を探した。

佐々木さん(右から2人目)ら薬局のスタッフと

佐々木さん(右から2人目)ら薬局のスタッフと

 そこで出会ったのが、薬剤師の佐々木健さんだ。目黒区を中心に在宅医療に特化した薬局としての独立を検討していた佐々木さんの考えに賛同。24年12月に佐々木さんが代表取締役となってサンロクゴ訪問薬局を立ち上げた。資金調達は佐々木さんが担い、高浦さんは薬局設立の許可申請や調剤に必要な機械の設定などを行った。

 高浦さんは、「以前の勤務先で管理薬剤師として働いており、薬事法規などの知識はあったので、あまり負担には感じなかった。他の薬局から手続きに関するアドバイスももらったので、人のつながりでどうにか立ち上げることができた」と語る。

 子供2人の育児にも奮闘。「夫は異なる業界の人だが、在宅訪問薬剤師の仕事を応援してくれている。仕事と育児の両立には理解あるパートナーの存在が必須だった」と高浦さん。昨年11月には、キャリアとライフイベントの両立に関する薬学生向けの座談会を他の女性薬剤師と実施し、早期に職場復帰した理由などを説明した。

 高浦さんは、転職先選びで重視したことを振り返り「社会が薬剤師に何を求めているかを考え、自分が関心を持つことに取り組んでほしい。特に女性は結婚や出産を経て子供が幼い時期に新たな勉強や挑戦をしようとしても、大きな労力を要する。だからこそ、社会のニーズに応えられる薬剤師になるために身につけるべきスキルを、若いうちに学んでほしい」と薬学生にエールを送る。



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