厚生労働省医薬食品局は、「医薬品・医療機器等安全性情報」(第258号)を公表した。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)等の攻撃性などの問題で、副作用報告を整理・調査した結果、患者やその家族などに対し、治療中の変化等に十分注意する必要があるとし、注意喚起を図ることとした。既に関連企業に、5月8日に使用上の注意の改訂指示を行った。
日本で抗うつ薬として承認されているSSRIは、▽フルボキサミンマレイン酸塩(デプロメール錠、ルボックス錠)▽パロキセチン塩酸塩水和物(パキシル錠)▽塩酸セルトラリン(ジェイゾロフト錠)--の3成分。それぞれ1999年5月、00年11月、06年7月に販売が開始され、関係企業の推計によると年間約82万人、約123万人、約58万人の患者に使用されている。
また、セロトニン・アドレナリン再取り込み阻害剤(SSNI)はミルナシプラン塩酸塩(トレドミン錠ほか)の1成分のみで、00年10月に発売され、年間約38万人の患者に使用されている。
これら医薬品は販売開始から09年3月末日までの副作用報告のうち、「敵意・攻撃性」等に該当するものは、パロキセチン塩酸塩水和物で173件、フルボキサミンマレイン酸塩65件、塩酸セルトラリン15件、ミルナシプラン塩酸塩15件が報告されている。そのうち、症例経過から傷害等の他害行為のあったものが、それぞれ26件(因果関係が否定できないと評価されたもの2件)、7件(2件)、2件(0件)、ミルナシプラン塩酸塩では該当する報告はなかったが、他害行為につながる可能性があったものが4件あった。
このようなことから、専門家の検討を踏まえ、使用上の注意の「重要な基本的注意」に、▽不安、焦燥、興奮、パニック発作等があらわれることが報告されている▽これら症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化、他害行為等が報告されている▽基礎疾患悪化等のあらわれるリスク等について、家族に十分に説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指示する--などの注意喚起を図ることとした。
また、脳の器質的障害または統合失調症の素因のある患者、衝動性が高い併存障害のある患者などに対し、慎重投与するよう求めた。
なお、厚労省では、今後、3環系、4環系においても、同様に精査評価していく考え。
イソフルランで副作用追記
さらに安全性情報では、全身麻酔剤「イソフルラン」(フォーレンほか)で、91年3月発売以来、今年3月までに、因果関係が否定できない副作用として、ショック・アナフィラキシー様症状が4例(死亡1例)、肝炎・肝機能障害18例(死亡5例)が報告されたことを受け、両副作用を使用上の注意の「重大な副作用」に追記し、注意喚起を図った。