厚生労働省は、東日本大震災後に既存薬の流通確保を優先させて1カ月遅らせた新薬の薬価収載を19日、告示する。国産の新規抗癌剤「ハラヴェン」は、単剤による高い治療成績を評価して原価計算方式の営業利益率に過去最高の40%を加算。類似薬効比較方式で算定した初の経口直接Xa阻害剤「リクシアナ」には有用性加算をつける。なお、ハラヴェンは薬価が一定基準を超える高額薬剤に該当するため、DPC対象患者であっても出来高で評価する。また、2型糖尿病の配合剤「グルベス配合錠」は薬価収載から1年間の14日処方制限を外す。中央社会保険医療協議会で了承した。
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▽トラムセット配合錠(ヤンセンファーマ)=トラマドール塩酸塩とアセトアミノフェンを配合した非癌性慢性疼痛・抜歯後疼痛治療薬。類似薬効比較方式Iで算定。トラマドールの単剤より低用量のため、副作用の軽減が期待できると共に、抜歯後疼痛の国内臨床試験で単剤を上回る鎮痛効果が証明されていることを評価し、有用性加算10%をつけた。市場規模はピーク時の6年目で171万人、160億円を見込む。
▽ミラペックスLA錠(日本ベーリンガーインゲルハイム)=プラミペキソール塩酸塩水和物を有効成分とするパーキンソン病治療薬。同一成分の既存薬との規格間調整で算定した。従来より投与回数が少なくて済むなど、医療上の有用性が高いことが客観的に示されていることを評価して、市場性加算5%をつけた。市場規模はピーク時の10年目で5万人、122億円を見込む。
▽レクサプロ錠(持田製薬)=エスシタロプラムシュウ酸塩を有効成分とする抗うつ薬。類薬が多数存在して新規性に乏しいため、類似薬効比較方式IIで算定した。市場規模はピーク時の6年目で45万人、338億円を見込む。
▽リパクレオンカプセル、同顆粒(アボットジャパン)=パンクレリパーゼを有効成分とする膵消化酵素製剤。原価計算方式で算定した。既存薬より力価が高く、マイクロスフィア化して腸への移行を高める製剤の工夫によって、十分な効果を示すことなどを評価して、営業利益率に10%上乗せした。市場規模はピーク時の9年目で2・4万人、33億円を見込む。
▽リクシアナ錠(第一三共)=エドキサバントシル酸塩を有効成分とする血液凝固第Xa因子阻害薬。類似薬効比較方式Iで算定した。従来は注射剤ばかりだったが、経口投与が可能になり、投与の煩雑さや患者への侵襲性を軽減できることを評価して、有用性加算5%をつけた。市場規模はピーク時の10年目で8・5万人、5・1億円を見込む。
▽グルベス配合錠(キッセイ薬品)=ミチグリニドカルシウムとボグリボースを配合した2型糖尿病治療薬で、同一効能・効果で投与経路も同じ単剤が存在するため、類似薬効比較方式の内用配合剤特例を適用し、通常より低い薬価を設定した。市場規模はピーク時の10年目で9万人、57億円を見込む。
▽ポプスカイン注(丸石製薬)=レボブピバカイン塩酸塩を有効成分とする局所麻酔薬。同一成分の既存薬との規格間調整で算定た。市場規模はピーク時の5年目で32・5万人、1・7億円。
▽ミルセラ注(中外製薬)=エポエチンベータペゴル(遺伝子組み換え)を有効成分とする腎性貧血治療薬。類似薬効比較方式IIで算定した。市場規模はピーク時の10年目で18万人、370億円を見込む。
▽ハラヴェン静注(エーザイ)=エリブリンメシル酸塩を有効成分とする乳癌治療薬。原価計算方式で算定した。国際共同臨床試験で既存治療に対して全生存期間の有意な延長が認められたことを評価して、営業利益率を40%上乗せした。市場規模はピーク時の10年目で8500人、119億円。
▽スープレン吸入麻酔液(バクスター)=デスフルランを有効成分とする全身麻酔薬。類似薬効比較方式Iで算定し、市場規模が小さい薬効分類であることに着目して市場性加算5%をつけた。メーカーは覚醒・回復が早いことや、小児の手術で出血量を抑えることなどを理由に、有用性加算5%を希望したが、認められなかった。市場規模はピーク時の10年目で89万人、26億円を見込む。
▽ノルスパンテープ(ムンディファーマ)=ブプレノルフィンを有効成分とする経皮吸収型持続性疼痛治療薬。類似薬効比較方式Iで算定した。市場規模はピーク時の10年目で26・4万人、145億円を見込む。
▽イクセロンパッチ(ノバルティスファーマ)/リバスタッチパッチ(小野薬品)=リバスチグミンを有効成分とするアルツハイマー型認知症治療薬。市場規模はピーク時の9年目で42万人、327億円を見込む。