薬学教育モデル・コアカリキュラムの改訂作業が進んでいる。
日本薬学会が文部科学省のコアカリ改訂に関する専門研究委員会に提示した改訂案では、大項目をA(基本事項)、B(薬学と社会)、C(薬学基礎教育)、D(衛生薬学教育)、E(医療薬学教育)、F(薬学臨床教育)、G(薬学研究)――の7領域で構成する方向性を示したほか、現行のコアカリで、D1:実務実習事前学習、D2:病院実習、D3:薬局実習に分かれている項目を、F(薬学臨床教育)に集約するなどの変更も加えている。
E(医療薬学教育)、F(薬学臨床教育)の項目についてはまだ協議中だが、文科省の山野智寛大臣官房審議官(高等教育局担当)が「8合目まで来た」と表現するように、コアカリ改訂作業は最終段階に入った。
一方、7日の委員会では、新コアカリに則した実務実習を円滑に行うための検討の場を設けることを確認した。
現在の実習は、実習施設や指導薬剤師の格差が大きく、どの実習施設に配属されたかによって、指導方法や学習内容が異なってしまうという課題を抱えている。現状の態勢のままでは、新コアカリのF(薬学臨床教育)に、あまりレベルの高い内容は入れられず、改訂作業にかなりの制限がかかってしまうとの懸念が委員から示されたためだ。
実務実習の施設間格差の主な要因は、薬学部の新設ラッシュに伴う学生数の増加により、実務実習の受け入れ施設を増やすことに注力した結果ではないのか。
新設ラッシュをめぐっては、大学の設置基準が許可制から届け出制に緩和されたことに加え、設置基準に実習を行う病院や薬局ではなく薬用植物園を付属させることが規定され、設置に大きな資金を必要としないで済んだ点を指摘する関係者は少なくない。
6年制課程を有する大学には、薬学実務実習に必要な施設を確保することを義務づけたが、せめて自前の薬局を持つべきとの声はいまだに聞かれる。医学部の大学設置基準では、付属病院の設置が定められているほか、医学教育は質を確保しつつ定員の増員を円滑に行うため、附属病院の面積まで規定している。
一部の大学で自前の実習施設を持とうとする動きが見られるが、薬学教育の問題の根本はここにあると言っても過言ではない。薬剤師には、6年制教育になってどう変わったか、何ができるようになったのかを社会に示していくことが求められている。
コアカリの改訂作業は、実務実習の施設間格差という避けて通れない課題に改めて取り組むきっかけを作った。関係者はこれを機に、実務実習を充実させていくための環境作りに真剣に取り組んでもらいたい。