2026年度診療報酬改定の答申は、薬局・ドラッグストア業界に少なからぬ影響を与えた。調剤基本料3にあった「300店舗規定」の撤廃、同基本料3-ハ引き上げはドラッグストアに恩恵が大きく、調剤基本料1の引き上げも個店薬局に一定の安心感をもたらした。一方で、6月の改定後に都市部で新規開設した門前薬局などを対象に基本料を引き下げる「門前薬局等立地依存減算」にはチェーン薬局が強く反発している。
今回の改定を単なる点数の上げ下げとして捉えるのは適切ではない。「患者のための薬局ビジョン」策定から10年という節目に、厚生労働省が保険局主導で総括に乗り出したと位置づけるべきだろう。ビジョンは25年に「全ての薬局をかかりつけ薬局にする」ことを掲げた。しかし現実は、医療機関の門前に薬局が並ぶ景色がなお続く。理想と現実の乖離が積み重なった末に、診療報酬による政策誘導が前面に出てきた。
多くの病院が経営難に直面する中、地域の医療提供体制が揺らいでいる。薬局も例外ではない。こうした環境下で行政が「都市部と過疎地域の地域差」と「門前薬局に象徴される立地依存」という二つの課題を掲げ、構造の是正を試みたことは理解できる。
その答えの一つとして示されたのが門前薬局減算である。薬局が多い地域での新規出店に歯止めをかけ、勤務薬剤師が1人で機能を十分に持たない薬局の小規模乱立を抑える。地域で踏ん張る既存の薬局を支え、医薬品の安定供給にも目配りするとの狙いがある。
しかし、既存薬局は「守られた」と受け止めて安堵して良い状況ではない。今回の改定は、診療報酬本体が3.09%の大幅プラスとなった。
もし、改定幅が前回から微増にとどまっていれば、物価高騰や賃上げ対応に財源が厚く振り向けられ、調剤報酬の政策的な裁量は狭まり、既存の門前薬局は適正化の対象となっていた可能性が高い。「激変緩和の陰で先送りされた課題がある」という点を見落としてはならない。
実際、28年度改定の附帯意見書には、「地域支援体制加算・在宅薬学総合体制加算における実績要件や人員要件のあり方を含め、都市部の小規模乱立を解消するための評価のあり方、医療資源の少ない地域に配慮した評価のあり方を引き続き検討する」と明記された。行政の視線は既に次の改定へ向いている。
今回も都市部の門前薬局などを適正化し、その財源を過疎地域に配分する方向性が検討されていた。26年度改定は、立地依存からの転換に向けた「助走」に過ぎない。28年度改定では、立地依存型薬局にさらなる変化が突きつけられる可能性がある。処方箋発行枚数が減少局面に入るとの見方もある中、都市部の薬局が面分業を推進できなければ、厳しい経営環境が待ち受けるだろう。

















